取り引き成立か決裂か 史上初の米朝首脳会談の行方は
シンガポール(CNN) 史上初となる現職の米大統領と北朝鮮の指導者による首脳会談がシンガポールで開催される。歴史的な会談であることは論をまたないが、ほんの半年ほど前まで、トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が互いをけなし合い、軍事的能力を誇示し、互いに核兵器の使用を示唆していたことを考えれば、いっそう異例の事態といえるかもしれない。
米朝首脳会談は、短期的に見れば、両首脳にとって国内で政治的にプラスに働くだろう。金委員長にとっては、長年の野望を実現する形となる。世界の超大国である米国の大統領と同等に見られ、会談し、歓迎されるというものだ。北朝鮮側からみれば、同国が世界の舞台で尊敬を勝ち取る核大国と認識されたと考えるだろう。金委員長がトランプ氏と会談する様子は北朝鮮国内での立場の強化に使われそうだ。
トランプ大統領にとっては、長期的な影響は会談がどのくらいうまくいくかや、両国が何に合意するか、そして、かつてのように合意が決裂するかどうかという点にかかっている。
一部の専門家からは、トランプ氏が会談に応じたことで、すでに金委員長に対して譲歩を行ったとの批判が出ている。会談を実施するなら、北朝鮮が不可逆的な核プログラムの廃棄やそれを確認する検査官が国内に入ることを認めてからすべきだったとの見方がある。
一方で、過去の政権によるそうしたやり方は失敗してきており、金委員長と個人的な関係を確立することで、トランプ氏は金政権と協議を進めるうえでこれまでのどの大統領よりも良い機会が得られるとの見方もある。
いずれにしても、金委員長が本当に核を放棄する用意があるのかどうかは不明だ。金委員長が発言したり約束したりしたことが実際に行われたかどうか確認するすべはあるのだろうか。トランプ氏は最初に制裁解除を実施することで、北朝鮮にさらに譲歩し、過去の過ちを繰り返す可能性もある。
シンガポールでの首脳会談では、素晴らしい取引がされるかもしれないし、漠然とした約束が取り交わされるだけかもしれない。そして、トランプ氏がこれまでの米大統領と同じように、これまで通り朝鮮半島情勢は解決不能だと気が付くかもしれない。