中国が打ち出す対外政策の新機軸、「戦狼外交」の実態とは
駐英大使の劉暁明氏も熱心な「戦狼」であり、定期的にツイッターを使って中国政府に批判的な欧州の声に反論している。
劉氏は5月25日、国営メディアの取材に応じ、「戦狼」は中国の外交政策を誤解した言葉だと指摘。中国外交を「独立した平和外交政策」と表現しつつ、時には強い姿勢も必要になると付け加えた。
ツイッターでは自身への質問に返信する形で、「『オオカミ』のいる場所には戦士がいる」としている。
王外相や劉大使のこうした発言にもかかわらず、「戦狼外交」という言葉を全面採用するかどうかを巡り、中国政府や国営メディアには依然として若干の迷いがあるように見える。
中国環球時報は4月、欧米に戦いを挑む中国の「戦狼外交官」を称賛し、欧米の外交官が「ヒステリックなチンピラ外交に訴える」現状では戦う姿勢が必要だと指摘した。
しかし1カ月後の5月24日、王外相の発言を受け、環球時報は社説で、実際に「戦狼外交」を展開しているのは米国の方だと主張。「中国外交に『戦狼』のレッテルを貼るのは過激思想の表れだ」と論じている。
中国共産党関連の専門家でローウィー研究所の上級研究員、リチャード・マクレガー氏によると、中国国内では今、どこまで攻撃的な外交政策を取るべきか激しい議論が交わされているという。
「中国外交の進め方を巡っては明らかに亀裂がある。単なる戦術面の亀裂かもしれないが、今のところ『狼たち』が優勢なようだ」「だが、この状況が続くかは分からない」