中国が打ち出す対外政策の新機軸、「戦狼外交」の実態とは
続編もすぐに制作され、17年に公開されると当時の中国で史上最高の興収を上げた。「戦狼2」の物語は、中国人民間人を救出するためにアフリカのある国に派遣された人民解放軍の部隊を中心に展開する。キャッチコピーは「どれだけ遠くにいようと、中国を侮辱する者は代償を支払う」だ。
「戦狼」シリーズと中国外交官の比較がなされるようになったのは2019年7月。当時在パキスタン大使館に勤務していた趙立堅氏が、ツイッター上で米政府に対する猛反論を始めたのがきっかけだ。
趙氏は物議を醸した一連のツイートで、人種差別や所得格差、銃暴力といった問題を抱える米国に中国の人権侵害を批判する権利はないと主張。米首都ワシントンには「白人」が立ち入ることのできない場所があると述べた。
これに対し、オバマ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたスーザン・ライス氏は激しく抗議し、趙氏を「恥知らずの人種差別主義者」と呼んだ。しかし翌年、趙氏のキャリアは花開き、今や中国外務省の定例記者会見を担う主要報道官3人の1人となっている。
これにとどまらず、世界各地の中国外交官も趙氏の攻撃的な戦術に追従するようになった。論争の舞台となるツイッターは中国国内では長年禁止されている。
趙氏の上司に当たる外務省の華春瑩報道局長はツイッター上で、批判的な声にたびたび反論。
新型コロナウイルスを巡り米中関係が悪化するなか、5月24日には「一部の政治家は基本的な事実を無視して、中国に関する数え切れないうそや陰謀論をねつ造している」と書き込んだ。