死亡したISIS指導者、目立たぬ存在も暗い過去
(CNN) シリア北西部で3日朝、勢力を回復する途上にあった過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の指導者が、米軍による急襲作戦中に死亡した。
米国防総省の高官によると、アブイブラヒム・ハシミ・クライシ指導者は、作戦開始時に爆弾を起爆し、自身の家族とともに自殺した。
クライシ指導者は、ISISの創設者だったアブバクル・バグダディ容疑者が死亡した後、2019年に後継者の地位に就いた。同指導者が組織を引き継いだ際、最大で英国よりも広大だった支配領域は、その多くが消失。観測筋の間でカリフ領なきカリフとの異名をとった同指導者は、組織の再起を模索していた。
ここ数カ月の間、同指導者はシリアやイラク、レバノンの様々な地域でISISの復興を指揮。イラクでは、ISISに関連した暴力沙汰が増加傾向にあると報告されていた。
またシリア北東部に位置するクルド人支配地域では、ISISは同組織の構成員の解放を目指し、数日間にわたって脱獄作戦を仕掛け、子どもたちを含む数百人の収容者が死亡。衝突によってクルド人戦闘員も数十人死亡した。
そうした中でも、クライシ指導者は前任のバグダディ容疑者と同様、目立たない存在として自身を保っていた。米国は「正義への報酬プログラム」において同指導者の情報に対し、1000万ドル(約11億5000万円)の報奨金を提供。組織の中での同指導者の経歴もまた不明瞭だが、ISISの収監者とのインタビューで集められた情報からは、バグダディ容疑者の最側近グループの一員として、暗い過去を持つ男の姿が浮かび上がってくる。
「正義への報酬プログラム」によるとクライシ指導者は、「イスラム国」へと変貌(へんぼう)する以前の組織「イラクのアルカイダ」で「宗教学者」となった。14年には同国北西部に暮らす少数宗派ヤジディ教徒の拉致、虐殺、人身売買を推し進め、正当化することに助力したという。