死亡したISIS指導者、目立たぬ存在も暗い過去
ヤジディ教徒のコミュニティーの多くは、一部のアナリストがクライシ指導者の出身地と考えているイラク北部の町タルアファルに近い地域で暮らしている。14年にISISがタルアファルやモスルを掌握した後、同教徒の女性や子ども数千人を奴隷化し、男性数千人を殺害した。国連はこれをジェノサイド(集団殺害)と呼んでいる。
テロといった主要国際犯罪の調査や証拠収集に当たるNGO「国際正義説明責任委員会」は、クライシ指導者が「イスラム国によるヤジディ教徒の女性や子どもたちの奴隷取引において、重要な立案者の1人」と指摘。
同団体のネルマ・イェラチッチ副代表は、「彼は個人的に、捕らわれていた女性たちを奴隷化し、レイプした」と述べている。
対テロ専門家のダニエレ・ライネリ氏はクライシ指導者について、「2010年以来の期間を、ほとんど注目されることなくやり過ごしてきた副官」だと指摘。だがISISの高位者たちが戦場で捕まったり死んだりすると、グループ内の理論的指導者の1人となったと説明した。
サウジ国営テレビ局アルアラビーヤによる18年のインタビューで、イラクで拘束されていたISISの幹部はクライシ指導者を「バグダディの取り巻きグループの中で最も目立っている」と述べている。
ISISはクライシ指導者の死を今も認めておらず、後任を誰が務めるかについても分かっていない。バグダディ容疑者の側近たちで逃げているとみられる人物はほとんど残っていない。