撤退のロシア軍、ヘルソン市を「死の街」に変える ウクライナ当局者が警告
ウクライナ・キーウ(CNN) ウクライナ軍は10日、南部ヘルソン州で領土を奪還したことを明らかにした。ロシア政府が同地域での部分的撤退を命じたことを受けての戦果だが、ウクライナ政府の当局者らは、後退するロシア軍の兵士がその途上で州都ヘルソンを「死の街」に変える恐れがあると警告している。
ウクライナ軍の報道官によれば、過去24時間で同軍は前線を7キロ進め、約260平方キロメートルの領土を掌握した。ヘルソン市へと続く道路に沿って位置する2つの町も奪取。そのうちの1つは同市から約15キロの距離にあるという。
ロシア政府は9日、ヘルソン市を含むドニプロ川西岸から軍を撤退させると発表していた。2月の侵攻開始以降で最大の軍事的後退の一つとなる。ロシア国防省の報道官は、翌日から撤退が始まると述べていた。
しかしウクライナ政府の当局者らは、この発表に対して懐疑的だ。ヘルソン州はロシアが国際法に違反して併合を試みた4州のうちの一つであり、領土をかけた戦闘をあきらめるとは考えにくいとの見方も出ている。ロシアのプーチン大統領は州全域に暮らす人々に対して「永遠に」ロシアの市民になると約束している。
ウクライナの当局者らはまた、ロシア軍が焦土作戦を実行し、各地を破壊状態に置きながら撤退するのではないかと危惧している。ポドリャク大統領府長官顧問は10日、ロシアが「ヘルソンを『死の街』に変えたがっている」と主張した。
ポドリャク氏はツイッターで、ロシア軍が至る所に地雷を仕掛けていると指摘。集合住宅や下水道、ドニプロ川東岸からの砲撃でヘルソン市を廃虚にする計画だとした。
「これこそまさに『ロシアの世界』の有様だ、侵攻し、強奪し、浮かれ騒ぎ、『目撃者』を殺害する。地域を破壊し尽くして立ち去っていく」(ポドリャク氏)
ウクライナ軍のナザロフ報道官は、同軍が奪還した地域に対してロシア軍が引き続き砲撃を行っていると明らかにした。人道支援物資の配布所を狙っているという。