ダム決壊で全土給電に脅威なし、広大な農地冠水か ウクライナ
(CNN) ウクライナ南部ヘルソン州のロシア占領地にあるカホウカ・ダムの決壊で広範な被害の発生が懸念される中、同国エネルギー省は8日までに、全国的な電力供給態勢に関しては脅威が生じるような状況にはなっていないとの判断を示した。
ただ、全国規模の給電能力に直接的な影響はないものの、洪水発生などを受け地域によっては供給に支障が出ることも考えられると声明で述べた。声明は6日時点のもので、深刻な規模のダム決壊は同日になって判明していた。
洪水により、ヘルソン州では住民約1万2000人が停電に襲われたとし、給水が滞る可能性にも触れた。危機管理対策の予防措置を準備しているともした。
また、ウクライナ農業省はダム決壊により農地約1万ヘクタールの冠水を想定。この数字はあくまでウクライナが押さえるドニプロ川右岸のみのものとし、左岸では「数倍以上の規模になるだろう」とも見込んだ。
ウクライナ南部の田畑などが「不毛地帯」と化す恐れがあるともした。ヘルソン州の灌漑(かんがい)システムの94%が水源を失うとし、中南部ザポリージャ州では74%、中部ドニプロペトロウスク州では30%の水準になると分析した。
ドニプロ川はウクライナ南東部を貫く主要な水資源で、下流には多くの都市や町が位置する。ロシア侵攻前には約30万人の人口を擁していたヘルソン市も含まれる。
ロイター通信によると、この川の流れをせき止めるカホウカ貯水池は約18立方キロメートルの水量を持つとされる。その大きさは米ユタ州のグレートソルト湖とほぼ同じ。
ダムの高さは約30メートルで、長さは約3.2キロ。ドニプロ川沿いに六つあるダムの一つで、ウクライナ南東部の多数の地域やロシアが2014年に強制併合したウクライナ南部クリミア半島の水がめとなっている。
同川の上流にありロシア軍が占領を続けるザポリージャ原子力発電所もダムの貯水池に水を頼っている。