アウシュビッツに住む唯一のユダヤ人、解放80年で現代の反ユダヤ主義に思うこと

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博物館の訪問者に説明をするヒラ・ワイスグートさん/Kamil Gut

博物館の訪問者に説明をするヒラ・ワイスグートさん/Kamil Gut

この1年、アウシュビッツのすぐ近くに住むことは、ワイスグートさんにとってさらに大きな意味を持つようになった。23年10月7日、音楽祭でイスラム組織ハマスの攻撃を受け、命からがら逃げるイスラエル人の動画をSNSで見て、ワイスグートさんは恐怖に震えた。

この奇襲以降、ワイスグートさんは欧州で高まる偏見の脅威を個人のレベルでも考慮せざるを得ないと感じてきた。英ロンドンへの旅行中、ワイスグートさんは母親と夫から六芒星(ろくぼうせい)のネックレスを外すように勧められたという。また、ヘブライ語のタトゥーを隠すために長袖を着るようにもした。

ユダヤ人の安全を図る慈善団体コミュニティー・セキュリティー・トラストは、24年上半期に英国全土で1978件の反ユダヤ事案を記録。この件数は過去最多だったという。ハマスの襲撃以降、英国では反イスラム事案も急増している。

ユダヤ人の人口が欧州最大のフランスでも、ハマスの襲撃以降、反ユダヤ主義による事案が急増。報告件数は284%増加したという。政府の報告書によると、ドイツも同様の傾向にあり、暴力事件も増えている。

問題の多くは、ネット上やSNSで発生している。ドイツ首都ベルリンでヘイトや反ユダヤ主義と闘う団体「KIgA」の責任者デルビシュ・ヒザルチ氏は、デジタルの世界にはルールも法律もなく、行為の責任も問われないと指摘する。同氏は「10月7日以降に広まったネット上のヘイトが最大の問題だと思う」と語った。

それでもワイスグートさんは、欧州、特に、ナチスが現代史上最大の殺人装置を作るために利用した町で、ユダヤ人として生活する決意を固めている。

ナチス独裁政権と強く関わりのある場所に自身が存在することについて、ワイスグートさんは「私にとって、これは彼らが私たちを壊滅させ、絶滅させようとしたが失敗したというメッセージだ」と語った。「私たちは『あなたは成功しなかった。もうたくさんだ。二度と繰り返してはいけない』と言うためにここにいる世代なのだ」

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