アウシュビッツに住む唯一のユダヤ人、解放80年で現代の反ユダヤ主義に思うこと
(CNN) ポーランド南部オシフィエンチムに住む3万4000人のうち、ユダヤ人は唯一人、若いイスラエル人のヒラ・ワイスグートさんだけだ。この居住地の選択は興味深い。なぜなら、この町の最も有名な特徴は、ナチスドイツのアウシュビッツ強制収容所があったことであり、1940年から45年の間に主にユダヤ人が110万人以上死亡したからだ。
ワイスグートさんの祖母の一家は、ハンガリーからの貨物輸送列車で強制収容所に到着し、ガス室に送られた。ワイスグートさんの寝室の窓からは、祖母が生き延びたアウシュビッツ第3強制収容所(モノビッツ)を見渡せる。
ワイスグートさんは、自身の家族の悲劇的な歴史を十分に認識しながら、2023年にポーランド人の夫の故郷であるオシフィエンチムに移り住んだ。
ワイスグートさんは、自身の居住地の選択について、ユダヤ人やイスラエル人から頻繁に懐疑的な目を向けられたり、軽蔑の対象にすらされたりしていると語った。ワイスグートさんは亡き祖母が今の住所を知ったら、「墓の中でひっくり返るだろう」と言いながらも、オシフィエンチムの隣人たちは温かく親切で、質問したり、穏やかな安息日を祈ってくれたりしたと話す。「反ユダヤ主義に関係する口論は一度としてなかった」という。
ワイスグートさんにとって、町にたとえわずかであってもユダヤ人の存在を維持することは極めて重要だ。監視団体は、アウシュビッツ解放80年を27日に迎える中、欧州では各地で不穏な傾向が現れていると警鐘を鳴らす。反ユダヤ主義の台頭だ。
その要因としては、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘に対する怒りや、一部の国での極右勢力の躍進が挙げられる。欧州基本権機関(FRA)によると、23年10月7日のイスラエルで発生したテロ攻撃以降、反ユダヤ主義に関連する事案が400%増加したと報告している団体もあるという。
同機関の広報担当者はCNNに「平均してユダヤ人の96%が反ユダヤ主義に遭遇したことがあると答え、80%が近年悪化していると考えている」と語った。
ナチスがやってくる前の1939年には人口の60%近くがユダヤ人だったオシフィエンチムの歴史は、抑制されない反ユダヤ主義が引き起こすものをはっきりと思い起こさせる。
ワイスグートさんは現在、この町のユダヤ人博物館で働いており、イスラエル人観光客を相手にかつて活気にあふれていたこの地域のユダヤ人コミュニティーについて啓もうしている。同博物館は、ワイスグートさんがオシフィエンチムに住む唯一のユダヤ人であると述べている。
ここ数カ月にわたり、CNNの取材に応じたワイスグートさんは、祖母が第2次世界大戦中の体験を決して話したがらなかったと語った。「アウシュビッツについて祖母に尋ねると、家から出て行けと言われた」