「冷静になれ」から一転、トランプ氏が中国除く関税停止を発表 何が起きたのか
(CNN) この日はトランプ米大統領が国民に「冷静になれ」と呼びかける場面で始まった。ところがそのわずか数時間後、トランプ氏は自身のSNSトゥルース・ソーシャルで、中国以外への相互関税の適用を90日間停止すると発表した。
トランプ氏は中国政府が先に追加の報復関税を発表したことを受け、対中関税を104%から125%に引き上げると表明。それ以外に相互関税の対象となっていた国については、一律10%の税率に戻す方針を明らかにした。
ベッセント財務長官は、停止措置により新たな通商協定を交渉する余地が生まれると述べ、当初からこれが大統領の戦略だったと主張した。
方針転換を受け、米株式市場は大幅反発した。ダウ工業株平均は2963ポイント(7.87%)、S&P500は9.51%上げ、ハイテク株中心のナスダックは12.16%急騰した。
最新情勢に追いつくために知っておくべきことを以下に挙げる。
トランプ氏の要因:トランプ氏は適用停止を決めた理由について、先週の関税発表後に「人々が少し行き過ぎていて、平静さを失っている」と思ったからだと説明。より具体的には、債券市場のボラティリティー(変動幅)を注視していたところ、「昨晩は人々がやや不安になっている様子が見られた」と指摘した。投資家の間ではここ数日、株式と債券の同時急落への警戒感が広がっていた。
取引を妥結する:トランプ氏は中国を含む「全関係者にとって公正な合意」を目指す意向を示し、中国は合意を結びたがっていると発言。関税の影響を受けた他国からも申し入れが相次いでいると強調し、記者団に「ご存じのように、75を優に超える数の国がここに来たがっている」と語った。
政権高官:ベッセント財務長官は今回の停止措置を称賛し、トランプ氏が「自らに最大限の交渉力をつくり出した」と評価。市場の変動が大統領の判断に影響したかとの質問には、各国がホワイトハウスに交渉を申し入れていることの直接的な結果だと示唆した。ナバロ大統領上級顧問(通商・製造業担当)は停止措置について、自らの経済ビジョンを否定するものではなく、関税をちらつかせる交渉手段の有効性を裏付けるものだと主張した。
共和党議員は満足:共和党の複数の上院議員によれば、昼食中に停止措置が発表されると歓声や拍手が沸き起こり、笑顔が広がった。多くの議員はこのところ関税強化を公に主張していたが、大統領による適用停止の決定を擁護した。上院民主党トップのシューマー院内総務は90日間停止の措置について、市場や懸念を募らせた米国民からの圧力でトランプ氏が「後退」している証しだと指摘。急激な政策転換は依然として経済に悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らした。
専門家の見解:コンサルティング会社RSM・USのチーフエコノミスト、ジョー・ブルスエラス氏は、今回の関税政策の転換では景気後退(リセッション)を防ぎきれない可能性があると警告。ゴールドマン・サックスのエコノミストらは午後に出した顧客向け報告書で、今後1年間の景気後退の確率を45%と予測した。