トランプ氏に寄付したハイテク企業トップたち、計264兆円の資金失う羽目に
ニューヨーク(CNN) シリコンバレーのリーダーたちは、トランプ米大統領が昨年の大統領選を戦う間や大統領就任時に、同氏への寄付を行ってきた。フロリダ州の同氏の邸宅マール・ア・ラーゴを訪れ、同氏の就任演説では出席者たちの中心に座っていた。しかしトランプ氏の大統領就任から3カ月、彼らの財布は同氏の政策によって打撃を受けている。
マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)のメタ、ティム・クックCEOのアップル、スンダー・ピチャイCEOのグーグル、イーロン・マスクCEOのテスラ、ジェフ・ベゾス氏創業のアマゾンの時価総額は年初来、累積で1兆8000億ドル(約264兆円)近く失われた。
トランプ氏は9日、予定されていた多くの関税を停止。これを受けて株式市場は持ち直したが、結果的にこれらのリーダーの個人資産は縮小することになった。
ハイテク業界のトップたちがほぼ間違いなく期待していたのは、トランプ氏への支持を通じて自分たちの事業に何らかの恩恵を得ることだった。具体的には規制緩和や独占禁止圧力の軽減などだ。実際トランプ氏はハイテク企業による米国での業容拡大にかねて意欲的であり、AI(人工知能)分野のリーダーとして米国の地位を固める姿勢も示していた。
しかしビッグテック全体が被った上記の損失は、シリコンバレーが今後も新たな多数の課題に直面することを示唆する。不確実性を伴うトランプ氏の関税政策は、アジアのサプライチェーン(供給網)を重点的に狙うとみられるからだ。ハイテク企業各社にとってアジアは部品の調達先であり、製品組み立ての拠点でもある。
トランプ氏は貿易相手国の多くへ適用予定だった「相互」関税を一時停止したが、対中関税については104%から125%に引き上げるとした。
アナリストらは、長期的な相互関税が実施され、結果として経済が不確実な状況に陥れば、ハイテク企業の収益は最大25%縮小すると警鐘を鳴らす。UBSが6日の報告で明らかにした。実現すればビッグテックにとって、大きな転換点となる。各社はここ数年、AIのおかげで比較的堅調な収益並びに株価の上昇を経験してきた。
メタ、アップル、アマゾン、テスラ、マスク氏の代理人はコメント要請に応じなかった。グーグルはコメントを控えた。
ここまで最も劇的な損失に見舞われたのはマスク氏だ。
トランプ氏再選を後押しするために少なくとも2億9000万ドルを寄付し、政府効率化省(DOGE)に関与したにもかかわらず、世界一の富豪であるマスク氏の純資産は年初来1430億ドル減少した。ブルームバーグ・ビリオネア指数の8日のデータで明らかになった。 大部分はテスラの株価急落が原因だ。テスラ株はマスク氏の政府での役割が物議を醸している現状や業界での競争激化、ここへ来ての関税の脅威で価値が押し下げられている。
メタはトランプ氏の大統領就任に当たり、いち早く100万ドルの寄付を約束。ザッカーバーグ氏はトランプ氏と再三面会し、政策の優先順位について議論した。トランプ氏の盟友で総合格闘技団体「UFC」のCEOを務めるダナ・ホワイト氏をメタの新取締役に迎えるなど、トランプ氏の意向に沿う経営方針の変更も行ってきた。
ところがザッカーバーグ氏の純資産は年初来265億ドル減少。メタの株価も同2.25%下落し、同社の時価総額は358億ドル目減りした。
ベゾス氏はトランプ氏の大統領選勝利の後、即座に祝福の言葉を贈り、就任時には100万ドルを寄付した。
ブルームバーグによると、ベゾス氏の純資産は年初来472億ドル減少。アマゾンの株価は同13%下落し、時価総額は3168億ドル減少した。
グーグルは就任時に100万ドルを寄付し、就任式の模様をユーチューブでライブ配信した。ピチャイ氏は他のCEOと共に、大統領選後数週間以内にマール・ア・ラーゴを訪問している。
にもかかわらず、グーグルの株価と時価総額は年初来それぞれ16.2%、3867億ドルの落ち込みを記録した。
アクシオスの1月の報道によれば、アップルのクック氏もトランプ氏の就任式典委員会に100万ドルを寄付。その前にはマール・ア・ラーゴでトランプ氏に面会し、関税や欧州でのハイテク規制について話し合っていた。
しかしアップルは、トランプ氏の関税政策によってとりわけ大きな打撃を被ると予想される。同社は多くの電子機器を中国、ベトナム、インドなどの他国の市場で製造しているからだ。アップルの株価と時価総額は年初来それぞれ18.5%、6840億ドル減少した。
米格付け会社ムーディーズ・レーティングスのアナリストらは、最近の調査文書の中で、関税による影響を推定するのは難しいとしつつ、「ハイテク分野の下位部門はどこも無傷ではすまないはずだ」と述べた。