ミャンマー大地震から2週間、被災者に届かない支援 「米国に見捨てられた」

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M7.7の地震から数日後、損壊した建物の前を歩く仏教徒/Sai Aung Main/AFP/Getty Images

M7.7の地震から数日後、損壊した建物の前を歩く仏教徒/Sai Aung Main/AFP/Getty Images

(CNN) 内戦で引き裂かれたミャンマーを襲ったマグニチュード(M)7.7の大地震。米国に対しては、最も必要な時にミャンマーを見捨てたという批判が募る。世界の災害対応支援の主導権を競合国に譲ったことを危惧する声もある。

3月28日に発生した大地震は数千人の命を奪った。大規模自然災害の発生は、米国のトランプ政権が米国際開発局(USAID)解体を進め、多額の国際援助を打ち切って以来、初めてだった。

専門家によると、ミャンマーの地震に対する米国の対応にはそうした援助の衰退が表れており、大規模災害に対する国際的な救援措置に空白を生じさせている。

「ミャンマーの一般市民は、米国に見捨てられた現実を見せつけられた」。USAIDの元幹部はCNNにそう語る。「米国はわずかな援助しか送らなかったばかりか、職員は3人しか派遣しなかった。その3人もその後、ミャンマーで援助を行っている最中に解雇された」

別の元幹部は、このUSAID職員3人が先週、ミャンマー入りした数日後に解雇を通告されたことを確認した。

マンダレーのモスク(イスラム教礼拝所)で地震による破壊の痕を見つめる少年/Zaw Zaw
マンダレーのモスク(イスラム教礼拝所)で地震による破壊の痕を見つめる少年/Zaw Zaw

今回の地震では少なくとも3550人が死亡、5000人近くが負傷している。ミャンマーは2021年の軍事クーデター以来、内戦が続き、約2000万人が援助を必要としている。

「必要性はとてつもなく大きい」と隣国タイの人道支援団体フォーティファイ・ライツのマシュー・スミス代表は言う。「だが残念なことに、援助の取り組みは不十分だ」

地震の2日後、米国は200万ドル(約2億8700万円)のミャンマー支援を表明し、その後計900万ドルに増額。米国務省報道官はXへの投稿で、緊急避難所や食料、医療、水などに充てると説明した。

しかしスミス氏によれば、現地にスタッフがほとんどいないことから、その資金をどう使うかは不明だという。

「その援助を管理する人もいなければ、現地の支援職員もいない。何の展開も起きていない」「これほど大幅な削減は無謀かつ無責任だ」(スミス氏)

マルコ・ルビオ米国務長官は先週、訪問先のブリュッセルで、「(米国は)世界の政府ではない」と強調。米政府はある程度の人道支援を継続するものの、他国も支援すべきだと述べ、「米国が世界の人道支援の60~70%を負担し続けるのは不公平だと思う」と力説した。

過去の例と比べると、2023年にM7.8の地震がトルコとシリアを襲った際、米国は職員数百人を派遣して1億8500万ドルの支援を表明した。

支援物資の入った容器を手にミャンマー入りするインドネシアの赤十字職員/Yasuyoshi Chiba/AFP/Getty Images
支援物資の入った容器を手にミャンマー入りするインドネシアの赤十字職員/Yasuyoshi Chiba/AFP/Getty Images

戦略的過ち

米国の援助縮小で生じた溝は他国が埋めている。中国、ロシア、インドなどの各国は援助物資や救助隊、医療チームをミャンマーに派遣した。

米国が援助を後退させる影響は人道面にとどまらない。中国やロシアといった敵国にこの地を譲ることは、ソフトパワーの観点から「戦略的な過ち」だと元USAID幹部は指摘する。

「そのリーダーシップの空白は他国が埋める。そうなれば米国が将来的に国際援助や国際支援を活用するのが難しくなる」(同幹部)

人道支援団体のスミス氏によると、ミャンマーを支援している一部の国は、反政府勢力に対する軍の攻撃にも手を貸しているという。軍は地震後も反政府勢力に対する攻撃を続けている。

「ミャンマー軍政が市民の殺傷に使う武器を提供しているのと同じ国々が今、ミャンマー入りして援助の取り組みを支援していることに困惑する」とスミス氏は打ち明けた。

灰と化した住宅地

震源に近いマンダレーのセインパン地区で家を失った住民に、援助は届いていない。

埋立地のごみの山の上に無許可で建てられた粗末な木造住宅が並ぶ一画は、地震で発生した火災が瞬く間に燃え広がった。

焼け跡に立ち尽くす住民の女性は「火が地区全体に燃え広がって住宅400棟が全焼した。全員が避難して、今は何も残っていない」とつぶやく。

女性は「政府が私たちを支援してくれればと思う」「今は個人の寄付に頼って暮らしているけれど、私たちは支援を必要としている」と訴えた。

地震発生から2週間。現地では生存者の捜索は打ち切られ、復興支援や被災者支援に活動が切り替わっている/Zaw Zaw
地震発生から2週間。現地では生存者の捜索は打ち切られ、復興支援や被災者支援に活動が切り替わっている/Zaw Zaw

火の勢いがあまりに激しく、所持品は何も持ち出せなかったという女性もいる。「この集落が全部灰になった」「命が助かってよかった。ただ家を取り戻したい」

ミャンマー軍政は地震の発生を受け、異例の国際支援を要請した。しかし国連の人道支援当局者によれば、軍は人道支援物資や職員の到達を妨害したり、統制したりしているという。

地震発生から2週間が過ぎて被災地で生存者を探す活動は打ち切られ、現在は復興支援や被災者支援に切り替わっている。

しかし支援が届かない中での活動は困難を増している。

倒壊した建物の下から遺体を収容する作業を行っている係員は、作業のための重機が必要だと話し、「救助隊の到着が間に合わなければ、遺体が腐敗して崩れてしまう」と訴える。

家を失った住民は、38度を超す猛暑や暴風雨に襲われている。

国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の現地職員は「激しい暴風雨があって、路上でテント暮らしの人たちがいる。ただでさえ困難な状況がさらに悪化している」と指摘。仮設避難所の設置や感染症の蔓延(まんえん)防止などの対策も急ぐ必要があるといい、「今は時間との闘い。もうすぐモンスーンの季節が始まる」と危機感を募らせている。

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