例えば米玩具メーカーのハズブロは、赤ちゃん人形やブラスター玩具、調理玩具などの宣伝内容を変更し、性別を問わないジェンダーニュートラルな宣伝に切り替えた。一方、ディズニーは、玩具は性別によって分類すべきものと考える親にも、そうでない親にも対応できるよう、通販サイトでは引き続き性別を選択できるようにしている。もっともどちらを選んでも表示される内容にほとんど変わりはない。
そうした対応が近いうちに普通になり、法制化される可能性もある。カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事の署名で21年10月に成立した州法では、大規模小売店に対して24年までにジェンダーニュートラルな玩具売り場の設置を義務付けた(従来のような男の子向けと女の子向けの売り場を設けることも禁止はしていない)。
もっとも、子どもの玩具を性別で分類するようになったのは、ここ100年ほどの現象にすぎない。
「20世紀初めごろの玩具はメジャーな消費者製品ではなく、多くの家庭が玩具を手作りしていた」と解説するのは、米サンノゼ州立大学のエリザベス・スウィート准教授。性別による分類はそれほど一般的ではなく、人形は男の子でも女の子でもプレゼントとして人気があったという。
性別に基づく役割分担を早くから子どもたちに教える目的で、衣類や玩具の性別分類が始まったのは、100年ほど前からだった。子どもたちの好みや未来を型にはめてしまおうと、モップとほうきのセットは女の子用、組み立て玩具は男の子用になった。
20世紀の終わりごろになると、役割分担型の玩具に代わってファンタジーの世界の役柄を反映した玩具が台頭。女の子向けはプリンセス、男の子向けはスーパーヒーローが主流になった。
玩具の外見は変わっても、根底にある玩具メーカーの偏見は変わらなかった。性別に関して「女性は受け身で育児や介護を担い、男性は能動的かつ活動的で能力がある」という考え方は同じだったとスウィート准教授は指摘する。