植物版「ノアの箱舟」、入り口付近が浸水 種子に被害なし
(CNN) 世界各地の農作物の種子を集め、絶滅の危機に備えて保管している北極圏の貯蔵庫で昨年、入り口付近に水が流れ込んでいたことが22日までに分かった。種子に被害はなかったが、再発に備えて対策を講じているという。
「スバルバール世界種子貯蔵庫」は、北極圏の永久凍土層に設けられた植物版「ノアの箱舟」。管理会社の報道担当者が発表したところによると、昨年10月に入り口から貯蔵庫へ向かうトンネルを約15メートル進んだあたりまで浸水した。例年より気温が高く、雨が多かったためとみられる。
同担当者によると、現地では近年、地盤が緩くなり、永久凍土が解けるなどの変化が観測されている。管理チームが地元大学の気象学者らと協力して原因を調べているが、長期的な気候サイクルの一部なのか、今後さらに進行するのかは判明していない。
とは言え、同社では万全を期して、入り口付近の変圧器を移動し、トンネルへの人の出入りを減らし、入り口の内側に防水壁を設けるなどの対策を講じているという。
永久凍土は天然の冷蔵庫の役割を果たしている。貯蔵庫の電源がたとえ使えなくなっても、内部の温度はマイナス8度に安定し、種子を何十年も保存できるというわけだ。
同担当者によれば、「温暖化で永久凍土が解けている」との説は今のところ憶測にすぎないが、専門家らはそれも可能性のひとつとして調べを進めている。
貯蔵庫は2008年に開設され、ノルウェー政府が所有、運営している。15年10月には、シリア内戦の影響でレバノンへ移転した施設に対し、保管していたサンプルを初めて送り出した。