ホタルに絶滅危機、生息地の減少や人工光の増加が原因か
(CNN) 世界中に約2000種類が生息するというホタル。夜の闇を幻想的に照らすこれらのホタルの一部が現在、絶滅の危機にさらされているとする研究が3日刊行の学術誌に掲載された。生息地の減少や殺虫剤の使用、人工光の増加などが原因だという。
研究を主導した米タフツ大学のサラ・ルイス教授によると、ある種類のホタルは特定の環境条件の下でなければライフサイクルを全うすることができない。例えばマレーシアに暮らすホタルの仲間(Pteroptyx tener)は繁殖のためマングローブなどの植物を必要とするが、マレーシアではマングローブの繁る湿地帯がパーム油の原料となるアブラヤシのプランテーションや海産物の養殖場に作り替えられている。
また日本、台湾、マレーシアなどでは、観光客にホタルを鑑賞させる「ホタル・ツーリズム」と呼ばれる形態のアトラクションが長年にわたり人気を博している。年間20万人が利用するともいわれるこうしたアトラクションを通じ、ホタルの住む環境が破壊されたり、飛べない種類のホタルが観光客に踏みつぶされるといった事態が発生しているという。
福岡県菰野(こもの)に生息するホタル/tomosang/Moment RF/Getty Images
ホタルにとってのもう一つの脅威は夜間に使用される人工光だ。街灯や広告の照明に加え、都会の周辺の空にまで拡散するこれらの光はときに満月を上回る明るさとなる。
研究論文の共著者でタフツ大学の博士課程を履修するアバロン・オーウェンス氏は、こうした光害について「人間を含む生物のバイオリズムを阻害するだけでなく、交尾の相手を探すホタルにとっても非常に邪魔になる」と指摘。エネルギー効率が高く、光量も多いLED電球の普及で、状況はさらに悪化していると分析した。
研究によれば、現在地球上の地表の23%以上が、夜間でも何らかの人工光に照らされた状態になっているとの推計もあるという。
メキシコ中部の保護区の中を飛び交うホタル/Mario Vazquez de la Torre/AFP/Getty Images
研究ではこのほか、ネオニコチノイドのような殺虫剤の使用がホタル絶滅のリスク要因になっているとも強調した。ネオニコチノイドは米国において、トウモロコシや大豆の生産過程で使用されている。
論文の著者らはホタルの保護団体と提携し、国際的なネットワークの会員350人を対象に調査を行って、ホタルが直面している脅威を分類した。現状、ホタルの生息数に関する証拠の多くは必ずしも信頼できるものではないため、より長期的なモニタリング調査によって減少の実態を把握する必要があると論文では述べている。