不安障害の患者にLSD投与、1回で即効性と持続性確認 FDAが「画期的治療薬」に指定
臨床試験に使ったMM120は、禁止薬物として出回っているLSDと違って「バッドトリップ(不快な幻覚作用)」を引き起こさないとカーリン氏は説明。「LSDは純度の高い製造が難しく、光や水で瞬く間に劣化する傾向がある」「我々はこれを医薬品業界の基準に従って製造し、純度と安定性を高めた。これは決定的な違いだ」と強調する。
副作用については、被検者が軽度から中程度と評価する症状があった。ほとんどは試験の当日に、陶酔感、錯覚や幻覚、不安、異常思考、頭痛、めまい、吐き気、多汗、嘔吐(おうと)、皮膚のしびれやピリピリ感、瞳孔拡張などの症状が表れた。
MM120の臨床試験は2022年8月から始まった。カーリン氏によると、医療現場でLSDの研究が行われたのは約40年ぶりだった。
1940年代から50年代にかけては、がんの不安、アルコール依存症、うつ、合成麻薬の使用による障害、PTSDなどの症状に対する効果を検証するため、何万人もの患者がLSDなどの向精神薬を使用した。研究者は「心理療法を短縮させる新たな手段」になり得るとして幻覚剤に期待を寄せた。
しかしハーバード大学で心理学を研究していたティモシー・リアリーとリチャード・アルパートの両氏が学生にLSDを使用させていたことが発覚して63年に解雇されると、幻覚剤使用の研究はすたれていった。