英国でこの1年間に建築された中で最も醜い建物に贈られる「カーバンクル・カップ」を、マンチェスター郊外の複合娯楽ビルが獲得した。
カーバンクル・カップは、英国の優れた建築を選ぶ「スターリング賞」のパロディーとして、英建築専門誌「ビルディング・デザイン」が2006年から毎年発表している。
今年の栄冠を勝ち取ったのは、マンチェスター南郊の町、ストックポートに英建築設計大手BDPが建てた箱型のビル「レッドロック・ストックポート」。総工費は4500万ポンド(約64億円)とされ、10のスクリーンを備えた映画館やレストラン、バー、スポーツジムが入っている。
マンチェスター南郊のストックポートにある「レッドロック・ストックポート」/Courtesy BUILDING DESIGN
審査員のコメントは、ストックポートの町の「失われたチャンス」、「衰えゆく目抜き通りを表現する悲しいメタファー」と、辛らつだ。
今年の最終選考に残った6件のうち、ロンドン市内の赤れんがの建物は「大人だらけの部屋でおかしな発言をして赤面する子どものよう」、リバプール旧市街に増築されたホテルは「ぶっきらぼうな直角と退屈な水平線ばかり」と酷評された。
昨年受賞したのは、ロンドンの複合ビル「ノバ・ビクトリア」。審査員が同誌に寄せたコメントは、「身をすくめたい気持ちにさせる建物。地下鉄駅から出た瞬間に、五感を荒々しく攻撃してくる」という内容だった。
これまでの受賞作で一番有名なのは、15年に選ばれたロンドンの高層ビル「20フェンチャーチ・ストリート」だろう。その形から「ウォーキートーキー(トランシーバー)」と呼ばれている。
ロンドンの「ウォーキートーキー(トランシーバー)」こと「20フェンチャーチ・ストリート」は2015年に受賞/Tom Dulat/Getty Images Europe
カーバンクルという名前の由来は、1984年にさかのぼる。ロンドンにあるナショナル・ギャラリーの増築案が王立英国建築家協会(RIBA)で検討された際、チャールズ皇太子が「だれからも愛される美しい友人の顔にできた、巨大なカーバンクル(できもの)」のようだと批判したことから、この言葉が醜い建物の代名詞として使われている。