1年前の火災で尖塔(せんとう)が焼失するなど大きな被害が出たフランス・パリのノートルダム大聖堂。新型コロナウイルス対策の影響で再建作業が中断し、850年の歴史を持つ大聖堂の未来が見通せない状況になっている。
フランスが新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込める対策を打ち出した3月16日以来、ノートルダム大聖堂の再建作業は中断した。修復に向けた作業は数カ月前から始まっていたが、被害の全容はまだ把握できていない。
昨年7月の時点で再建作業が行われる大聖堂/Bertrand Guay/AFP/Getty Images
大聖堂の再建責任者は1月に上院で行った証言で、被害の程度を把握するためには、天井裏への立ち入り検査や火災前から設置されていた足場の撤去なども含め、慎重を要する作業がまだ幾つも残っていると指摘、大聖堂を再建できるかどうか判断するのはまだ時期尚早との見方を示していた。
足場の解体は6月に完了する予定だった。しかし、作業の中断が修復のスケジュールにどう影響するのか、2024年までに大聖堂を再び公開するとしたマクロン大統領の当初の計画がどの程度現実的なのかについて、フランス文化省は明らかにしていない。
マクロン大統領の優先課題は新型コロナウイルス対策にあり、大統領は13日に行ったテレビ演説で、全土の封鎖措置をさらに1カ月延長すると発表した。
大聖堂内部の安全な場所で聖金曜日を祝うミサが催された/Ludovic Marin/Pool/AFP/Getty Images
新しい尖塔の設計プロセスが封鎖措置の影響を受けるのかどうかも分かっていない。フィリップ首相は昨年、新しいデザインを選ぶための国際コンペを発表し、当初の予定では選考を勝ち抜いた提案が今年上半期に発表される予定だった。
再建に向けて寄付の申し出があった8億5000万ユーロ(約1000億円)についても、どの程度の実現が見込めるのかは分かっていない。