地上高くに建てられたツリーハウスは、子ども時代の魔法と冒険のシンボルとしておなじみだ。
建築家のピーター・アイジング氏は、子どものころ、ツリーハウスに想像力をかき立てられたという。アイジング氏は折れた枝や麻ひも、建築廃材などを拾っては、木の上に間に合わせの建築物を作っていた。
アイジング氏は現在、持続可能な建築とインテリアをテーマにしたデザイン会社、アーキテクツ・パシフィック・エンバイロメンツのマネジングディレクターを務めている。2008年には、歌手のトレーシー・コリンズ氏の協力を得て、ニュージーランドのイエローページの販売キャンペーンの一環として、オークランド北部にあるレッドウッドの木の中腹に建てられた、さなぎをイメージしたレストラン「The Yellow Treehouse」のデザインを担当し、子ども時代の夢を実現させた。
The Yellow Treehouse/Courtesy of Images Publishing Group
アイジング氏はメールで、「ツリーハウスはオルタナティブな建築様式の中で常に自らの居場所を保持し続けるだろう。我々を自然に回帰させる冒険の機会、子ども時代と冒険との感情的なつながり、囲いや保護物の建築に関する見方が変わるというワクワク感をツリーハウスは思い出させてくれる」と語っている。
アイジング氏の新刊「Tree Houses: Escape to the Canopy(仮題:『ツリーハウス:林冠への逃避』)」には、世界中の最も荘厳な現代のツリーハウスが集められている。ここでは、想像力と洗練された工学が交差した7つのツリーハウスを紹介する。
The 7th Room スノヘッタ作、スウェーデン・ハラッズ
The 7th Room/Courtesy of Images Publishing Group
スウェーデン北部にあるツリーホテルは、連なったキャビンが地上13〜33フィート(約4~10メートル)の高さに建てられた先駆的な宿泊施設だ。その中でもひときわ目を引くのが、「The 7th Room」と呼ばれるキャビンだ。
ダークウッドのファサード(正面)は12本の柱で支えられており、高い位置にあるツリーハウスの中央を突き抜けて大きな松が生えている。内装はアッシュ材のフローリングとバーチ材の合板の壁で構成されている。ゲストは、社交の場となる洗練されたラウンジ、天窓のあるミニマルなベッドルーム2部屋、ルーレ川の渓谷を望むテラスを利用できる。
リビングエリアには、北向きの床から天井までの窓があり、晴れた夜にはオーロラを見られるかもしれないことから、「オーロラ・ラウンジ」と呼ばれている。
Evans Tree House モデュス・スタジオ作、米アーカンソー州
Evans Tree House/Courtesy of Images Publishing Group
ウェブサイトによると、アーカンソー大学のガーバン・ウッドランド・ガーデンズにあるこのツリーハウスは「子どもたちを森の中に連れ戻すという野心的な計画の一環」として建てられたという。樹木学からインスピレーションを得た建物の外観は、113本のイエローパイン材の「リブ」で作られた半透明のシェルで、室内に空気や日光が入り込めるようになっている。
円錐(えんすい)形に近い珍しい形状は神秘的な雰囲気を醸し出し、子どもと大人が松やオークのある「エバンス・チルドレンズ・アドベンチャーガーデン」を探検できるようにデザインされている。内部は展望台になっており、屋内階段は4つの階につながっている。それぞれの階は、幹、枝、葉、実や花など、木のさまざまな部分を表している。
Arctic TreeHouse Hotel スタジオ・プイスト作、フィンランド・ロバニエミ
Arctic TreeHouse Hotel/Courtesy of Images Publishing Group
北極圏内に位置するこのフィンランドのホテルは、オーロラを求めて訪れる人たちのために、北向きのガラス張りとなっている。建物のほとんどは現地から離れた場所で作られ、森の中に運び込まれた後に柱の上に乗せられた。こうすることで建設による環境への影響を抑えたという。
このプロジェクトの建築を担当したスタジオ・プイストは、流出を防ぐため、再生可能なフィンランドの木材を使用し、植物で覆われた「緑の屋根」を設置した。
部屋からは時期に応じて、雪に覆われた森や緑豊かな景色を楽しむことができる。キャビンには、暖炉や簡易キッチン、サウナなどさまざまな設備が用意されており、アークティックシーン・エグゼクティブ・スイートに宿泊するとスパも楽しめる。
Casa Flotante タジェレスケ作、メキシコ・メキシコ市
Casa Flotante (Floating House)/Courtesy of Images Publishing Group
「カーサ・フロタンテ(浮かぶ家)」として知られるこの3階建ての建物は、木の幹のような形をしており、その周りを階段が取り囲んでいる。床から天井まである窓から光を取り込み、周りの緑を眺めることができるようになっている。
最下階はドラムセットやギター、スピーカーなどが置かれた仕事場兼スタジオになっており、2階と3階にはそれぞれバスルームとベッドルームが設けられている。ツリーハウスの外階段には植物がつるされているほか、大きな窓がついており、室内と屋外の区別がつかないようになっている。
Løvtag Treetop Cabins シーグル・ラーセン作、デンマーク・ハズンド
Løvtag Treetop Cabins/Courtesy of Images Publishing Group
デンマークの北ユトランド地方にあるこのホテルの各キャビンの中央には大きな木が生えている。3棟の現代的なツリーハウスは、床から天井まである窓から自然を身近に感じることができ、清潔感のある白い壁と明るい木製のアクセントが北欧のミニマリズムを感じさせるデザインとなっている。
また、サステイナビリティー(持続可能性)を重視し、熱加工された木材やリサイクルメタルが使用されている。平屋建てのキャビン内には、小さなキッチン、クイーンサイズのベッド、ソファベッド、屋外用シャワー付きのバスルームがある。
階段を上り屋上テラスに出れば、周辺の森の景色やかおりを楽しむことができる。
Black Cabin ラ・キャバーヌ・ペルシェ作、イタリア・トスカーナ州
Black Cabin/Courtesy of Images Publishing Group
イタリアのビテルボにあるオリーブとラベンダー農場にたたずむ、高さ23フィート(約7メートル)のツリーハウスは、樹齢200年のマリタイムパインの周りに建てられた。だが木がそのまま残るよう慎重に設計されており、住む人に自然の日陰を与えてくれる。
「オーナーたちは、ツリーハウスが寓話(ぐうわ)や想像力の産物を超えたものであるという考えを探求したいと考え、木からつり下げられたエコロフトと呼ばれるものを作り出した」とアイジング氏への手紙で説明している。
デザイナーのクローディア・ペリッツァーリ氏が手がけたインテリアには、ガラス、ブラックスチール、カナダ杉が使われており、大理石とクリスタルで装飾されたシャワーも備えられている。
広々としたデッキからは、周囲のチミニ丘陵や遠くのティレニア海を眺めることができる。
Constantia Treehouse マラン・フォルスター・アーキテクチャー・インテリア・デザイン作、南アフリカ・ケープタウン
Constantia Treehouse/Courtesy of Images Publishing Group
Constantia Treehouseは実際に木の中に建てられたわけではないが、確かにツリーハウスに似ている。
3階建ての円筒形の建物は、スチールと温かみのある木の表面を組み合わせており、背の高いガラスパネルの外壁には太陽の光がたっぷりと差し込んでいる。アイジング氏によると、このデザインは著名な建築家ルイス・カーン氏や隈研吾氏などの作品からインスピレーションを得たという。
1階には、グレー、ブルー、イエローの色調でまとめられた広々としたリビングとキッチンがある。曲がりくねった階段は2階のベッドルームに通じており、ベッドは大きな窓に面している。最上階には座席を備えたルーフデッキがあり、ケープタウン郊外の有名なワイン産地であるコンスタンシアの比類なき景色を一望できる。