韓国の釜山市が、野心的で新しい海上への移住計画を認可した。2022年に最初の区画の作業が始まる予定だ。
設計者によれば、今回提案されている「水上都市」は一連の相互接続されたプラットフォームで形成され、最終的には1万人を収容できるようになる。沿岸部にとっては、海面上昇によってもたらされる脅威への大胆な解決策となりそうだ。
この「オーシャニクス」計画は設計者や建築家、技師の協業で2019年に「耐洪水」都市のための計画として発表され、グループはその後、試作品を建設できる場所を探していた。グループは21年11月、釜山市と国連人間居住計画(ハビタット)と合意書に署名し、韓国の沖合に最初の区画が建設されることになった。
工場であらかじめ製造され所定の位置にけん引されたプラットフォームは海とともに浮き沈みする。プラットフォームはそれぞれ約2ヘクタールの広さを持ち、最高7階の建物に300人が居住できるよう設計されている。
建物の屋上部分が張り出し、日影のテラスを作り出す/courtesy BIG
これらのコミュニティーは最終的に、より巨大なネットワークを形成し、通路や自転車道で接続される。設計を主導しているデンマークの建築会社ビャルケ・インゲルス・グループ(BIG)によれば、プラットフォームは中央の港の周囲に集まって、より大きな1650人向けの村を形成することもできる。
こうした村々は理論上はさらに大きな1万人の大都市「オーシャニクス・シティー」を形成することが可能だ。そこには飲食店やコワーキングスペースから都市農園や娯楽施設などあらゆるものが備わっている。
釜山市が位置する韓国南部の海岸線は海面上昇の影響について特に脆弱(ぜいじゃく)だと考えられている。韓国の地元メディアの報道によれば、環境保護団体のグリーンピース韓国は20年、釜山市にある有名な海雲台ビーチが30年までに消滅する可能性があると警告した。
そして、影響はすでに感じられている。サステナビリティー誌に掲載された研究によれば、釜山市は20年までの10年間で韓国のどの場所よりも深刻な洪水による被害を経験している。
提案されている都市は時間の経過に伴い有機的に形を変え適応可能。300人の区画から1万人の都市へと発展する/courtesy BIG
閉じた循環システム
今回提案された海上都市は「自活」が想定されており、住民は自分たちの食料やエネルギーを「廃棄物ゼロの閉じた循環システム」の中で作り出すことができる。
プラットフォームには共同農場や、養殖と水耕栽培を組み合わせた食料栽培施設、堆肥(たいひ)用の庭がある一方で、周辺の海域には海産物の養殖場を設置することもできるかもしれない。
人の住んでいないプラットフォームは水上風力タービンや太陽光パネルを設置したり、新しい建物の建設に必要な竹を育てたりするのに使用する。
BIGが提案する都市計画には真水の製造も含まれ、現地の処理場や、雨水を集めて保管するシステムを利用する。建築家はまた電気で稼働する輸送手段を想定しており、水中翼船によるタクシーや太陽光で動くフェリーによって都市の別の場所や本土とつながるという。
オーシャニクスの共同創業者であるイタイ・マダモンベ氏は電子メールを通じ、釜山市での最初の試作品の区画は25年までに完成して人々がそこに住めるようになると述べた。マダモンベ氏は、今回の計画をめぐり、釜山市で開発された科学技術の展開について10カ国の政府と協議を行っていると明らかにした。
プラットフォームの下ではバイオロックの岩礁や海藻、カキやホタテなどの貝の養殖が水をきれいにして、生態系の再建を加速すると設計者は語る/courtesy BIG
釜山市の朴亨埈(パクヒョンジュン)市長は声明で、今回の合意を歓迎し、「海岸都市は複雑な変化に直面しており、我々には人間と自然、科学技術が共存できる新しい構想が必要だ」と述べた。
国連ハビタットのマイムナ・モハド・シャリフ事務局長は一方で釜山市について試作品にとって「理想的」な場所だと述べた。
同事務局長は声明で「持続可能な海上都市は我々が利用できる気候変動への適応戦略の一部だ」と指摘。声明ではまた、「水と闘うのではなく、水と調和して生きることを学ぼう」と述べた。