地中海の島国キプロスの教会から44年前に略奪された1600年前のモザイク画が、このほど本国に返還された。キプロスの通信社が報じた。
モザイク画は18日、オランダのハーグでのセレモニーでキプロス考古省と教会組織の関係者に手渡された。
3年がかりでモザイク画の行方を追っていたオランダの美術史家アーサー・ブラント氏によると、聖マルコの頭部を描いた同作品は東ローマ帝国時代に制作されたもの。1974年にトルコがキプロスへ侵攻した際、同国北部の教会から持ち去られていた。
モザイク画の所在を突き止めた美術史家のアーサー・ブラント氏/Credit: JAN HENNOP/AFP/AFP/Getty Images
当時は他にも複数の宗教画が略奪されていたが、同作品の返還でそれらのすべてが戻ったと考えられる。ブラント氏はAFP通信に対し、同作品について「東ローマ帝国時代初期の美術品としては現存する最後の、そして最も美しい作品の1つ」と説明した。
ブラント氏はウェブサイトで、欧州全域を回ってモザイク画を探索した経緯を紹介。そこでは情報提供者が別件で逮捕されたり、関係者がおびえて行方をくらましてしまったりといった紆余(うよ)曲折があったという。
結局モザイク画は、モナコに住む英国人家族の住居で見つかった。40年以上前に購入した作品が略奪されたものだと知らされた家族らは「恐怖を感じていた」とブラント氏は語る。同氏によれば、モザイク画の返還に同意した家族には、長年にわたって作品を保護・管理していたことに対する補償が提供されるという。