1960年代、「ヌーベルバーグ」と呼ばれたフランスでの映画革新運動の中で頭角を現し、世界的な映画賞も数多く受賞した映画監督、アニエス・ヴァルダ氏がこのほど死去した。90歳だった。
家族の出した声明によるとヴァルダ氏は28日夜、自宅で家族や友人に囲まれて息を引き取ったという。
1928年にベルギーで生まれたヴァルダ氏は第2次大戦中、フランス南部の町で家族と船上での生活を送っていたことで知られる。その後はパリのソルボンヌ大学で学び、文学と心理学の学位を取得した。
2017年にアカデミー賞名誉賞を受賞したアニエス・ヴァルダ氏/Kevin Winter/Getty Images North America/Getty Images
写真家としてキャリアをスタートしたヴァルダ氏だったが、やがて映画を撮り始める。60年代に入るとその作品が高く評価され、「ヌーベルバーグの母」と称されるようになった。このころの代表作に「5時から7時までのクレオ」、「幸福(しあわせ)」などがある。
「幸福」は、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。85年の「冬の旅」はベネチア国際映画祭金獅子賞に輝いた。60年に及ぶ監督生活の中で、フィクションのほか実体験を反映したドキュメンタリーを含む24本の作品を手掛け、亡くなる直前まで現役として活躍していた。
1985年、「冬の旅」を撮影中のヴァルダ氏/Micheline PELLETIER/Gamma-Rapho via Getty Images
2015年と17年にはカンヌ国際映画祭とアカデミー賞の名誉賞をそれぞれ女性として初めて受賞。18年に若手アーティストのJRと共同で監督した「顔たち、ところどころ」はアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。
1962年、「5時から7時までのクレオ」で主演を務めたコリーヌ・マルシャン(右)と/Keystone/Hulton Archive/Getty Images
夫は「シェルブールの雨傘」などの作品で知られ、1990年に死去した映画監督のジャック・ドゥミ氏。