英国の文豪、ウィリアム・シェークスピアが「ロミオとジュリエット」を執筆した住居が、新たな研究によってこのほど初めて特定された。
演劇史家のジェフリー・マーシュ氏は10年にわたり、シェークスピアの住居に関する綿密な研究に携わってきた。公的記録を相互参照した結果、シェークスピア本人が1590年代に暮らしていた家を正確に割り出すことに成功した。
これまでの研究からシェークスピアは当時、現在のリバプールストリート駅に近いロンドンの中心部に住んでいたことが分かっていた。該当する教区の1597~98年の記録に、シェークスピアの名が納税者として記されているからだ。
1598年の納税者名簿。下から2段目にウィリアム・シェークスピアの名が記されている/National Archives
ただ教区内のどの住所に暮らしていたかは判明していなかった。
マーシュ氏は1550年代にまでさかのぼる各史料を分析。シェークスピアが教区教会に隣接する敷地を見下ろす建物に住んでいたことを突き止めた。当時シェークスピアは、皮革製品を扱う商人らの組合からその住居を借りていたという。
1550年代の史料から分析を行った演劇史家のジェフリー・マーシュ氏/Paul Harries
「ロンドンでの住居を知ることで、シェークスピアが自身の作品と人生についてどのような刺激を受けていたのか、より深く理解することができる」と、マーシュ氏は指摘する。「生まれ故郷のストラットフォード・アポン・エイボンからロンドンへ移ってきて数年で、シェークスピアは市内でも指折りの裕福な教区に住んでいた。権力者や富裕な商人、医師や一流の音楽家なども身近な存在だった」と述べた。
そのうえで、ロンドンのような都市に居を構えることはシェークスピアの社会的地位を押し上げ、その後のキャリアの形成にも好影響を及ぼしただろうと付け加えた。