仏パリ近郊の住宅の台所で見つかった13世紀イタリアの希少な絵画について、フランス政府が国外への持ち出しを禁止する措置に踏み切ったことが25日までに分かった。この作品は伊画家チマブーエの失われた傑作とされる「嘲笑されるキリスト」で、先ごろオークションにかけられ、約2420万ユーロ(約29億円)で落札されていた。
フランス政府は同作を「国宝」に指定。国外への持ち出しを2年半禁止し、その間に作品を買い取るための資金を集めるとしている。買い取り後はルーブル美術館の所蔵とし、チマブーエの他の作品と並べて展示する考えだ。
国外持ち出し禁止の判断は、国宝に関する諮問委員会のパネルが下し、リステール文化相が承認した。
チマブーエが描いた「嘲笑されるキリスト」/Philippe Lopez/AFP/Getty Images
1240年ごろにイタリアのフィレンツェで生まれたチマブーエは、画家で建築家のジョットを見出した人物としても知られる。ジョットはルネサンス以前の時代における最も偉大な芸術家の1人と広く認識されている。
「嘲笑されるキリスト」は、祭壇背後などに飾る2枚折りの画像の一部で1280年に描かれたとみられる。この年、チマブーエはキリストの受難と磔刑(たっけい)を中心とする8つの場面を題材にした絵画を制作したという。
鑑定に携わった美術専門家のジェローム・モンクーキル氏は、チマブーエ作の絵画について「世界に11点しか存在しておらず、珍しいもの」だと説明する。
「嘲笑されるキリスト」は、パリ北郊コンピエーニュに住む女性が台所に飾っていた。女性は作品の来歴を知らず、ギリシャの宗教画だと思い込んでいたという。