過去1年間、自宅で過ごす時間が非常に長かったため、身の回りの変化を切望している人は多い。
しかし、ペンキの塗り替えや創造的なリフォームでは満足できない場合でも、今はより過激な代替手段がある。それは「デジタル住宅」だ。
「マーズハウス」と呼ばれる世界初のデジタルNFT(非代替性トークン)住宅が先ごろ50万ドルを超える高額で売却された。
最近マスコミで大きく取り上げられているこのNFTは、デジタルアート、画像、音楽などをオンライン上で販売可能にする技術だ。
NFTは、オンライン上で販売されているデジタルアートなどの信頼性や所有者を効果的に立証する独特なデジタルトークンで、ビットコインなどの暗号通貨で使用されているデジタル台帳ブロックチェーン上でアーティストの署名とともに暗号化されている。
「マーズハウス」は50万ドル以上の値段で売却された/Courtesy Krista Kim
マーズハウスの購入者は、製作者であるデジタルアーティストのクリスタ・キム氏に288イーサ(ETH)を支払った。イーサは暗号通貨で、288イーサは51万4557.79ドル(約5600万円)に相当する。
購入者は、代金と引き換えに3Dファイルを受け取り、それらを「メタバース」上にアップロードできる。
キム氏によると、メタバースはインターネット上の仮想世界で、仮想の土地区画の購入・取引や、デジタル住宅の建設やデジタル会社の設立が行われているという。
またファッションやアクセサリーといったデジタル資産の市場もあり、ユーザーはデジタルアバター(分身)を通じてメタバースで生活したり、他のユーザーと交流したりできる。
キム氏によると、マーズハウスの背後にあるコンセプトは「パンデミックの間、ロックダウン(都市封鎖)措置が取られたのがきっかけでひらめいた」という。
「テックイズム・アーティスト」を自称するキム氏は、CNNとのインタビューで次のように述べた。
「マーズハウスは次世代のNFTだ。アップルがAR(拡張現実)メガネとARコンタクトレンズを発売し、われわれがARインターフェースされた未来に足を踏み入れた時にさまざまなことが起きるが、マーズハウスはその前兆だ」
「アート、NFT、暗号通貨など、デジタル資産との付き合い方の劇的な変化やアイデアが現実化しつつあり、将来、世界的なパラダイムシフト(考え方の大転換)を起こすだろう」
「また、新型コロナウイルスの影響で巣ごもり生活を強いられ、すべての人にとってメンタルヘルスが最大の関心事になった今、われわれが室内環境によってどのように癒やされるかに関する、より革新的なアイデアが必要だ」
アーティストのクリスタ・キム氏はマーズハウスを次世代のNFTと呼ぶ/Courtesy Krista Kim
キム氏は3月のインスタグラムへの投稿で、「マーズハウスではあえて、癒やしの雰囲気である『禅』を省いてある」と述べている。
またキム氏は、米ロックバンド、スマッシング・パンプキンズのギタリスト、ジェフ・シュローダー氏の協力を得て、心を穏やかにするBGMを制作したとしている。
NFTにとって記録的な月
マーズハウスが売れた3月はNFTにとって記録的な月となった。
3月22日には、米ツイッターの創業者兼最高経営責任者(CEO)のジャック・ドーシー氏が、15年前にドーシー氏自身が最初に投稿したツイートをNFTとして290万ドルで売却した。2006年3月21日に投稿された初ツイートは「今、自分のツイッターを設定中」という文章だった。
また3月11日には、史上初のNFTアートが競売にかけられ、6900万ドルという高額で落札された。Beeple氏は今回の落札で、作品に最も高い値が付いた生存するアーティストのランキングの上位にランクされた。
またイタリアの高級ブランド、グッチも、スニーカーのデジタル限定モデルを同ブランドの実物の靴よりも数百ドル安い価格で販売を開始した。