16世紀に制作され、聖書に登場するサムソンとデリラの物語が描かれた「信じられないほど希少」な皿が英国の邸宅の引き出しから見つかり、このほどスコットランドのオークションで当初の推定価格を10倍上回る126万3000ポンド(約1億9000万円)で落札された。
この直径27センチの皿は、1520年~23年ごろにニコラ・ダ・ウルビーノによって製作されたとみられる。
錫釉(すずゆう)が施されたこのマヨリカ焼きは、6日に実施されたネットオークションで当初8万~12万ポンドでの落札が見込まれていた。だが終わってみれば記録破りの126万3000ポンドで競り落とされた。
ネットでライブ配信されたオークションでは、電話やEメールを通して購入希望者からの入札が殺到。落札したのは匿名の入札者だった。
この工芸品は、英スコティッシュボーダーズ州にある大邸宅「ローウッドハウス」の所蔵品の一部としてリストアップされた品々400点超の一つ。英国の競売会社「ライオン・アンド・ターンブル」が主催した今回のオークションでは、絵画や家具、書籍の他、銀製品や美術品が出品された。
この皿は英スコティッシュボーダーズ州にある大邸宅「ローウッドハウス」の所蔵品の一つだった/Lyon & Turnbull
同社の広報担当者は7日、CNNの取材に対し、社内の欧州製陶器の専門家が引き出しにしまわれているこの皿を発見し、「並外れた品質の希少品」だと認識したと語っている。
マヨリカ焼きの専門家、セリア・カーナウ氏によると、この陶芸家は16世紀前半のイタリアでマヨリカ焼きの「イストリアート」式の装飾を究め、誰もが「マヨリカ描画のラファエロ」と認める人物だという。
カーナウ氏は、落札された皿がロシア・サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館にあるモノグラムのある1521年の日付が記された皿に密接に関係しているとも説明した。
落札時にエディンバラオークションハウスで進行役を務めていた、同社幹部で個人コレクション部門の責任者であるギャビン・ストラング氏は7日、CNNの取材に対し、オークションの最中の雰囲気は「電気が走るようだった」と回想。「ハンマーが振り下ろされた際、拍手喝采が沸き起こった」と話した。
また同氏はこの皿について、「信じられないほど希少」なものと話し、マヨリカ焼きの専門家は「人生に一度あるかないかの掘り出し物で、本当に究極の機会だ」と評したと説明している。
ストラング氏によると、入札は予想価格を少し下回るところから始まったが、ある入札者が状況を動かそうと一気に5万ポンド増額したところで急速に勢いづいたという。
「このようなユニークなものが市場に出てきたときには、度胸がある人、財力のある人がいるかにかかってくる」とストラング氏は語る。