これまで世界で見つかった中で最大となる6600万年前のトリケラトプスの骨格化石がオークションにかけられ、660万ユーロ(約8億7500万円)で落札された。事前に予想された150万ユーロを大幅に上回った。
愛着を込めて「ビッグジョン」とあだ名されるこの化石は21日、競売会社ドルオの運営するパリでのオークションにかけられた。他にも化石や隕石(いんせき)といった貴重な自然史上の遺物が出品された。
骨格化石は最初に米サウスダコタ州で見つかった。地質学者のウォルター・W・ステイン・ビル氏が2014年に発見した。生息していたと考えられるのはララミディアと呼ばれる太古の巨大大陸。この大陸は今日のアラスカとメキシコをまたぐ地域に存在していたという。
発掘の後、泥で汚れた化石を修復したイタリアで、考古学者らは恐竜の実際の大きさを確認することになる。ビッグジョンの頭蓋骨(ずがいこつ)は長さが2.7メートル近くあり、幅は1.98メートルを超えている。骨格は全体の6割がそろった状態だった。英自然史博物館によるとトリケラトプスの頭蓋骨は「進化の勝利」の産物であり、あらゆる陸上動物の中で「最も魅力的な」部類に入るという。
とはいえ、誰もがビッグジョンの落札に胸を躍らせることにはならないようだ。2020年9月、「スタン」と名付けられたティラノサウルス・レックスの化石がクリスティーズのオークションに出品されたときには、古脊椎(せきつい)動物学会が競売の運営会社に対し懸念の声を上げた。
「個人の手に売却された化石標本は、科学の領域から失われる恐れがある」と同学会は指摘。「科学者が利用できたとしても、個人所有の標本に含まれる情報を得られるのか、将来も利用可能かどうかについては保証できない。それゆえに(科学の進歩の要諦<ようてい>となる)科学的主張の立証も行えなくなる」と警鐘を鳴らした。