(CNN) 香港のビクトリア・ハーバーに出現して話題を呼んでから10年。オランダ人アーティスト、フロレンティン・ホフマン氏のオブジェ「ラバー・ダック」(ゴム製のアヒル)が、今度は友だちを連れて帰ってきた。
香港で芸術作品の公共展示を手がけるクリエーティブスタジオ「オールライツリザーブド」は1日、ホフマン氏による風船のアヒル2羽が今月中の2週間、香港の海に浮かぶと発表。新たな作品を「ダブル・ダックス」と呼んだ。
5月には展示の試運転が実施されたとみられ、風呂用のおもちゃを巨大化させたアヒル2羽がボートに引かれて、香港で5番目に大きい島、青衣島の沖に現れた。高さは18メートルと、10年前に香港に展示されて世界のトップニュースになったアヒルよりわずかに大きい。
試験運用時に目撃されたアヒル2羽=香港、5月25日/Joe Raedle/Getty Images
主催者はプロジェクトの記者発表で、2羽のアヒルを漢字の「喜」が2つ並んで「二重の幸福」を示す図案と、友人を示す「朋」に例えた。どちらも左右対称で、同じ文字が隣り合わせになっている。
ラバー・ダックは2001年に考案され、その6年後にフランスで初登場。その後、大阪やシドニー、サンパウロに現れ、13年5月に中国の特別行政区、香港に到着した(ホフマン氏のアヒルはすべて同じように見えるが、同氏はそれぞれの場所に新たなアヒルを制作している)。前回ビクトリア・ハーバーに来た時は、世界から注目を集めた。なぜか一夜にしてしぼみ、数日後に修復されたことも、注目された理由のひとつだ。
アヒルが香港での展示中、中国検閲当局の怒りを買ったことも話題になった。1989年に起きた天安門事件の記念日を数週間後に控えたタイミングで、中国軍の戦車に正体不明の抗議者が立ち向かう「戦車男」の写真を改変し、戦車の列をアヒルに置き換えた画像が拡散。中国のSNS、微博(ウェイボー)で「大きな黄色いアヒル」という言葉が規制される事態となった。
その翌年には、ホフマン氏の作品に影響された別のアーティストによるヒキガエルの巨大な黄色いオブジェが、SNS上で江沢民元国家主席に似ていると話題になり、検閲対象になった。
ラバー・ダックは香港に初めて登場した後、さらにソウルやロサンゼルスといった都市の水上に浮かんだ。台湾の都市、基隆でも突然しぼみ、チリの首都サンティアゴでは標識に衝突した事故で破裂した。
ホフマン氏はほかにも、日常的な対象を予想外の大きさで再現した大規模な芸術作品を制作してきたことで知られる。風呂用のおもちゃだけでなく、うさぎのぬいぐるみや折り紙の舟もあった。ロンドンのテムズ川には14年、カバの英名「ヒッポポタムス」をもじって「ヒッポポテムズ」と名付けた木製のカバが展示された。
ダブル・ダックスは今月10日からビクトリア・ハーバーに再登場する予定。展示を前に、香港を走る路面電車の車体や市内各地の地下鉄駅に2羽の姿が貼られている。