(CNN) アンティークの愛好家が2017年、古物店でN・C・ワイエスと思われる署名の入った絵画を購入した。4ドルで手に入れたこの作品について当時この女性は冗談で、実は米国の著名アーティスト一族の当主が描いた本物かもしれないと言っていた。この冗談は笑いごとではなかった。絵画は9月に開かれるオークションに出品され、落札価格は最大25万ドル(約3600万円)と推定されている。
オークションを主催するボナムス・スキナーの専門家によると、出品者の女性はニューハンプシャー州マンチェスターの古物店セイバーズで中古の額縁を探していて、そうとは知らずにこの作品を購入した。
ワイエスの絵画は、ほとんど破損したポスターや版画と一緒に壁に立てかけてあったという。
女性は作品を持ち帰ってインターネットで調べたが、この作品に関する情報は見つからなかった。絵画は寝室に飾り、数年後には自宅のクローゼットに収納した。
今年5月になって掃除の際にこの絵画を見つけ、「Things Found in Walls」というフェイスブックのグループに画像を投稿した。同グループは「壁の中で見つけたり、庭で掘り起こしたり、祖母の家の向かい側の廃屋にあったものに関するストーリー」を掲載する場と説明されている。
この投稿へのコメントがきっかけで、女性はワイエス一族(N・C・ワイエスと息子のアンドリュー・ワイエス、孫のジェイミー・ワイエス)に詳しい元学芸員のローレン・ルイス氏と知り合った。絵画の実物を見たルイス氏は「99%間違いなく本物」だとボストン・グローブ紙に指摘した。
「確かに幾つか小さな傷があり、表面のクリーニングも必要だったが、過去80年の経緯が誰にも分からないことを考えれば素晴らしい状態だった」。ルイス氏はグローブ紙にそう語っている。
ワイエスは定期刊行物や小説といった出版物の表紙を手掛けることもあった。9月に出品される絵画は、1884年に出版されたヘレン・ハント・ジャクソンの著書「ラモーナ」の1939年版のために、ワイエスが制作した4枚のうちの1枚だった。この作品でワイエスは、宗教人物像の前で若い主人公が年老いた養母と向き合う姿を描いている。
ボナムス・スキナーによると、ほかに発見されているのは1枚のみ。オークションハウスの専門家は、出版社のリトル・ブラウン・アンド・カンパニーが編集者または著者側に作品を受け渡したのかもしれないと推測している。
ワイエス一族の作品は昨年、マイクロソフト共同創業者ポール・アレン氏のコレクションがニューヨークでクリスティーズのオークションに出品され、アンドリュー・ワイエスの1980年の絵画「デイドリーム」が予想落札価格300万ドルの7倍以上に当たる2320万ドルで落札された。