(CNN) スウェーデン・アカデミーは5日、首都ストックホルムで、2023年ノーベル文学賞をノルウェーのヨン・フォッセ氏(64)に授与すると発表した。「言葉にできないものに声を与える革新的な戯曲や散文」を評価した。
フォッセ氏はノルウェー西岸で生まれた。戯曲約40本のほか、小説や詩、エッセー、児童書、翻訳を多数手掛けている。
アカデミーは「フォッセ・ミニマリズム」の名で知られる同氏のスタイルを称賛した。
ヨン・フォッセ氏=2019年、オスロのノルウェー劇場/Håkon Mosvold Larsen/NTB/AFP/Getty Images
フォッセ氏の代表作は七つの作品を1巻にまとめた「セプトロジー」。妻を亡くし1人暮らしをする年老いた画家が、宗教やアイデンティティー、芸術、家族の暮らしについて考察する物語を描く。
約800ページからなる「セプトロジー」は形式面の実験が称賛されてきた。フォッセ氏の思索的な散文は句読点などによる中断がほとんどなく、同氏の哲学的な問いに呪文のような流れを与えている。
アカデミーは「フォッセ氏は言語面でも地理面でも強固な地域的つながりとモダニズムの芸術技法を組み合わせている」と述べ、同氏のスタイルに影響を与えた人物としてアイルランドの劇作家サミュエル・ベケットやオーストリアの詩人ゲオルク・トラークルを挙げた。
フォッセ氏の選出は、アカデミーが他の大陸の作家をないがしろにして欧州の作家を優遇しているとの批判への反論にはならなそうだ。
ノーベル文学賞は歴史的に男性作家が圧倒的多数を占めており、これまでの受賞者120人のうち、女性は17人のみにとどまる。