ロンドン(CNN) 2度にわたり盗まれ、英ロンドンのバス停でビニール袋に入っているのが見つかったイタリアルネサンスの巨匠ティツィアーノの絵画が7月、競売に掛けられる。最高3200万ドル(約50億3460万円)の値が付くとみられている。
競売大手クリスティーズの声明によると、「エジプト逃避途上の休息」はクリスティーズで競売に掛けられ、推定落札額は1900万ドル~3200万ドルに上る見通し。
この絵には、ユダヤの王ヘロデが幼子イエスの殺害を望んでいることを知ったイエスと聖母マリア、ヨセフがエジプトへ向かう途中、休息を取る場面が描かれている。
ティツィアーノの本名はティツィアーノ・ベチェッリオ。キャリアの初期、1500~1510年の時期に絵を制作した。
絵の大きさは縦46.2センチ、横62.9センチと、後年のティツィアーノの代名詞となる巨大作品に比べ小さい。
この油絵には特筆すべき歴史がある。
複数の欧州の貴族の手を経た後、1809年、フランスのウィーン占領中にナポレオン軍によって略奪され、パリに持ち去られた。
15年にウィーンに戻り、再び民間コレクションに所蔵された後、英イングランド・ウィルトシャーに住む第4代バース侯爵ジョン・アレクサンダー・シンの手に渡った。
1995年にシンの子孫の邸宅ロングリートから盗まれ、7年間にわたり所在不明になっていたが、美術探偵チャールズ・ヒル氏がロンドンのバス停で発見した。
クリスティーズは声明で「この絵画は貴族や大公、皇帝が喉(のど)から手が出るほど欲した作品だ。自然の中での家族の愛情を描いた色鮮やかな情景が評価されている」と述べた。
「絵の主題と同様、『エジプト逃避途上の休息』は波瀾(はらん)万丈の長い旅を経てきた。その旅は全く終わっていない」
この絵は来月2日、英ロンドンで行われるクリスティーズの競売「オールドマスターズ・パート1」に出品される。