(CNN) 日本の美を象徴するのは今やウクライナ生まれのモデル――。少なくとも、それがコンテスト審査員の判断だった。審査員らが22日に椎野カロリーナさん(26)を「ミス日本」に選出したことで、文化的アイデンティティーを巡る議論が巻き起こった。
主催者のウェブサイトによると、毎年開催されているミス日本コンテストでは、「日本女性の美の最高位」を体現する出場者に栄冠を贈る。欧州にルーツを持つ受賞者を選んだ判断は、美の基準や日本人であることの意味について疑問を投げかける結果になった。
日本国籍を持つ椎野さんは5歳の時から名古屋で暮らしており、流ちょうな日本語を話す。東京でCNNの取材に応じ、日本人として認められたかったと語った。
大会のフィナーレで壇上に並ぶミス日本の参加者たち/Miss Nippon
椎野さんは、見た目が原因でなかなか日本人として受け入れてもらえなかったと説明。自身の受賞により、誰を日本人と見なすのかの認識に変化が生まれればと期待を口にした。
私たちは多様性の時代、多様性が必要とされる時代に生きていると椎野さん。自分のように見た目と中身のギャップに悩んでいる人は多いとも述べ、「私は日本人ではないと言われ続けたけど、絶対に日本人なので」自分を信じてミス日本に出場した、認めてもらえて本当にうれしかったと語った。
日本は比較的移民が少なく、民族的に均質な国だ。このため近年では、当局が人口高齢化による穴を埋めるため、外国人住民や労働者の受け入れ拡大に乗り出している。日本は移民に対する保守的な見方と、新たな若い労働者を受け入れる必要性のバランスを取ることに苦心しているが、米調査機関ピュー・リサーチ・センターによる2018年の調査では、移民が国を強くするとの見方を示した日本人が59%に上った。
X(旧ツイッター)ではユーザーの一人が「カロリーナさんは国籍が日本なんだから、何も問題無い」と書き込み、国際スポーツ大会で日本代表を背負った様々な外国生まれの選手と比較。「彼らもカロリーナさんも日本人です」と指摘した。
椎野さんの日本愛を称賛する声もあった。「日本人ですら日本を大事にできない人が多いのに、小さい頃から住む日本をここまで大事に思い帰化して日本人としてチャレンジしミス日本を手にした事になんの問題があるのか」。Xのあるユーザーはそう問いかけ、別のユーザーも「椎野さんのインスタグラムへの投稿は礼儀正しく丁寧に書かれていた。美しいだけでなく、日本人の和の心を持っている。これこそミス日本」という趣旨の書き込みを行った。
一方、日本人の祖先を持たない人が日本の美の理想を体現できるのかと疑問を投げかける声もあった。
ミス日本のトロフィーを受け取る椎野カロリーナさん/Miss Nippon
歴史研究家の山下弘枝氏はXで「人種差別は絶対に許してはならない」とした上で、「ミス日本というコンセプトで容姿を競うなら、これぞ日本の美という基準であってほしいと個人的には思う。椎名カロリーナさんの容姿では、現代的美女の価値観下、純血の日本人は勝ち目無し」と指摘した。
椎野さんの10年近く前には、宮本エリアナさんがハーフの出場者として初めてミス・ユニバース日本大会で優勝。宮本さんはその後、15年のミス・ユニバース世界大会で日本代表を務めた。
ミス日本は国際的な美人コンテストの一環ではなく、ミス・ワールドやミス・ユニバースのような世界的な大会との関係はない。
他の参加者と共に笑顔を見せる椎野カロリーナさん(中央)/Miss Japan Association/Handout via Reuters
ミス日本コンテストが最初に開催されたのは1950年。大手紙の読売新聞が主催した。当初の目的は、第2次世界大戦後の人道援助に対する日本の感謝を米国に伝えに行く親善使節を選ぶことだった。
第1回大会で優勝したのは、後に女優として活躍する山本富士子さんだった。ミス日本コンテストの公式サイトによると、山本さんの「凜(りん)とした気品」はその後、日本女性の新しい美の基準となったという。
15年間の中断を経て、67年には和田静郎氏がコンテストを復活させた。和田氏はテレビで健康美容体操を指導する著名人になった。
現在のコンテストは孫の和田あい氏が運営している。和田あい氏はCNNの取材に、椎野さんをミス日本に選んだ理由について、椎野さんは努力家だが謙虚で、他人への深い思いやりを持つ日本人女性だからだと語った。