エココンシャス(環境保護を意識している)ブランドの製品を購入することは、必ずしもサステナブル(持続可能)なライフスタイルを取り入れるための最良の方法ではない。オンラインショップに返品された服は思いもよらない方法で処理されているし、ファストファッション(最新の流行を取り入れた衣料品を大量生産し、低価格で販売するファッションブランド)よりも高級ブランド品を購入することが必ずしも労働者搾取の防止につながるわけでもない。
エシカルファッション(生産に携わる人や地球環境に配慮したファッション)や持続可能性に関する誤解が広がっているため、時に人々はライフスタイルに関して全く無意味な行動を取ってしまう。そこで今回はファッションに関する9つの通説と、その裏にある真実をご紹介する。
通説:エココンシャスなブランドや、持続可能なブランドの製品を購入することがファッション・フットプリント(衣料品の生産による二酸化炭素排出量)を減らす最良の方法である
真実:ファッション・フットプリントを減らす最良の方法は、衣料品をなるべく購入しないことだ。古い衣類の補修や仕立て直し、着古した服のリスタイリング、友人との物々交換や服の交換(パンデミック後)により、今持っている衣類を最大限に活用してほしい。どうしても新しい服を買う必要がある場合は中古品を探してみよう。一部の企業が提供する修理サービスを利用するのもいい。
通説:ファストファッションよりも高級ファッションの方が持続可能性が高い
真実:高級ブランド品を購入したからといって持続可能性が保証されるわけではない。
バーバリーなどいくつかのファッションブランドは「カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態)」なショーを開催している。またグッチは操業全体がカーボンニュートラルになっていると発信している。ステラ・マッカートニーは何年も前からより環境に優しい経営を目指し、2030年までの二酸化炭素排出量30%減を目指すファッション業界気候行動憲章に署名した数多くのブランドの一つとなっている。
だが、高級ブランドはまだ多くのやるべきことがある。オンラインショールームの「オードル」が今年発表した報告書は、ファッションウィーク(約1週間にわたって開催される服飾の新作発表会・販促展示会)が持続不可能である実態を浮き彫りにしている。
同報告書によると、2697の小売りブランドと既製服のデザインを行う企業5096社が国際的なファッションウィークに参加する際のカーボンフットプリント(CFP)を12カ月間測定したところ、二酸化炭素(または同等の温室効果ガス)の排出量は24万1000トンに上り、これは同期間の小国の排出量、または米国の4万2000世帯の照明を1年間つけっぱなしにするのに十分なエネルギー量に相当するという。
通説:衣類の価格が高ければ高いほど、その生産に関わった労働者が搾取された可能性は低い
真実:多くの中価格帯のブランドおよび高級ブランドは、実際には安売りのブランドやファストファッションブランドと同じ工場で生産している。つまり、労働者の権利や彼らの労働条件などはすべて価格に関係なく搾取的になりうるということだ。さらに、衣類の価格が高いからといって労働者に公正な報酬が支払われたとは限らない。総生産コストに占める人件費の割合は非常に小さいためだ。
通説:古着の寄贈はクローゼットを空にするための持続可能な方法だ
真実:慈善団体や古着屋は、受け取った服の一部を無償で提供したり、販売しているが、寄贈された服は、最終的に発展途上国の再販市場に出荷されたり(これは地元の産業に悪影響を及ぼす恐れもある)、ごみとして処理される可能性が高い。古着屋に寄付された衣類のうち実際に販売されるのは全体のわずか10%にすぎない。
通説:持続可能性を推進するブランドは持続可能だ
真実:「持続可能性」など、グリーンウォッシング(あたかも環境保護に配慮しているかのように装うための)用語は、地球環境への影響を減らしたいと考える消費者を引き付けるために悪用されている恐れがある。
ファッション業界の検索エンジン「Lyst(リスト)」によると、2019年に持続可能性関連の検索語は前年から75%も増加したという。米コンサルティング大手マッキンゼーのサスキア・ヘドリッヒ氏は「持続可能なファッションを評価するための客観的な基準がない」と指摘する。
またリサイクル生地を使用したり、カーボンニュートラルを目指すだけでは不十分だ。「持続可能性は、非常に細分化されたファッションサプライチェーンの広範な問題に及ぶため、消費者らは『持続可能性』の本当の意味を完全に理解していないことが多い」(ヘドリッヒ氏)
衣料品の生産による環境負荷を低減したいなら、最良の方法はなるべく新しい服を購入しないことだ/
通説:大半の服はリサイクルが可能だ
真実:衣類はリサイクルが困難な場合がある。その理由の一つは、衣類の生産の仕方にある。例えば、多くの生地は綿とポリエステルなどを混ぜて作られる。しかし、この生地を新しい服に生まれ変わらせるには、綿とポリエステルを分ける必要がある。
米国では、廃棄された衣類や靴のうち、リサイクルされるのは14%未満にすぎない。しかし、「リサイクル」は「ダウンサイクリング」と「アップサイクリング」に分けることができ、その違いが重要だ。ダウンサイクルされた衣服は、最終的に住宅の断熱材やカーペットに使用される繊維として再利用されることが多い。一方、オランダのシンクタンクのサークルエコノミーによると、欧州で回収された衣類のうち実際に新しい衣類に再生されるのはわずか全体の1%未満だという。
通説:安物の服は修理する価値がない
真実:ファストファッションの服を修理して着ることは、その服の購入代金の元を取ることを意味するかもしれない。しかし、同じ服を交代で着ることこそ、カーボンフットプリントを減らすための最善策だ。また出費を抑えるために、ボタンの交換、壊れたファスナーの修理、緩くなった縫い目の縫い直し、ズボンのすそ上げなど、自宅で衣類の簡単な修理を行う方法を学ぶのもいい。
通説:オンラインショップに返品された衣類は他の客に再販売される
真実:返品された衣類は、焼却処分されるか廃棄される可能性がある。企業にとっては検品してパックし直すより処分した方が安上がりであることが多い。またアパレルメーカーは、ブランド価値の低下や、高級感を損なうのを恐れ、自社の製品を寄贈したがらない可能性もある。
通説:服はタグに表示されている国で作られている
真実:たしかに服自体はタグに表示されている国で製造の最終工程が行われているだろう。しかし、タグだけでは服の生産に関わった労働者たちの複雑なつながりまでは分からない。
英NPO「ファッション・レボリューション」は報告書の中で次のように述べている。
「服のラベルだけでは、(服の材料である)綿が世界のどこで栽培され、繊維がどこで糸に加工され、その糸を使ってどこで生地が作られ、どこで染色やプリントが行われたのかは分からない」
同報告書はチャックやボタン、ビーズなどもどこから来たか不明だと指摘した上で、各ブランドがサプライチェーンの透明性を高めるように、タグが見える状態で自撮りをして「#whomademyclothes?」(誰が私の服を作った?)のハッシュタグをつけて投稿するように人々に呼びかけている。
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この記事はCNNスタイルの編集チームが英NPO「ファッション・レボリューション」と提携して制作しました。国際的な非営利のキャンペーンであるファッション・レボリューションは、清潔、安全、公正で、透明性が高く、説明責任を果たすファッション業界の実現に向けて取り組んでいます。