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エル・ファニングも纏った「ネイキッドドレス」、その長い歴史

エル・ファニングさんが着用したバルマンの透明ドレスには60年の歴史がある

エル・ファニングさんが着用したバルマンの透明ドレスには60年の歴史がある/Cindy Ord/MG24/Getty Images

(CNN) 大切なイベントに裸で参加することを悪夢だという人もいれば、入念に計画した現実だという人もいる。6日夜に開催された「メットガラ」に完全に透けた「バルマン」のドレスで現れたエル・ファニングさんにとって、それは後者だった。

まばゆくきらめき、繊細なファニングさんは、一歩間違えば粉々に砕けてしまいそうに見えた。バルマンによると、このドレスのオーガンザ(薄く透明な生地)はガラスのような印象を与えるため手作業によって4層の樹脂で覆われた。完成したドレスは、J・G・バラードが1962年に発表した短編小説「時の庭」に登場する、時計を巻き戻すために使われた貴重な「クリスタルの花」をイメージさせた(時の庭は今年のメットガラのテーマでもある)。

しかし、全裸に近い装いを取り入れたセレブはファニングさんだけではない。エミリー・ラタコウスキーさん、キム・カーダシアンさん、ドージャ・キャットさん、フィービー・ディネバーさん、グレタ・リーさん、そしてエディ・レッドメインさんまでもが透けた衣装を身にまといレッドカーペットに現われた。そのドレスの多くは慎み深さを守るために戦略的に配置された刺しゅうやクリスタルの装飾以外は何も付いていない。このネイキッドドレス(レッドメインさんの場合はネイキッドスーツ)は注目に値する。

シースルーのドレスはオーガンザや樹脂の層でつくられた/Theo Wargo/GA/The Hollywood Reporter/Getty Images
シースルーのドレスはオーガンザや樹脂の層でつくられた/Theo Wargo/GA/The Hollywood Reporter/Getty Images

着用者のヌードをほのめかすようなデザインは、より遠回しなものもあるが、レッドカーペットやランウェーに登場するセレブから支持を得ている。2月のグラミー賞では、ドージャ・キャットさんとマイリー・サイラスさんがともにヌード同然のドレスを着用し、3月のアカデミー賞では、ジェニファー・ローレンスさん、バネッサ・ハジェンズさん、フローレンス・ピューさん、ケンダル・ジェンナーさん、アイス・スパイスさん、チャーリー・XCXさん、シャーリーズ・セロンさん、アイリス・ロウさんが、透け感のあるレースからクリスタルのネットまでさまざまな種類のネイキッドドレスを思い出させてくれた。2024年の春夏コレクションでも、「プラダ」から「アーデム」「アクネ・ストゥディオズ」「ディオール」までほとんどのショーでシースルーのスカートが見られた。

しかし、このようなヌードを想起させるような衣服へのこだわりは今に始まったことではない。ハリウッド俳優のキャロル・ベイカーさんが、バルマンがデザインした最初期のネイキッドドレスを着て写真撮影に臨んだのは1962年のことだ。

ベイカーさんの胸は、透け感のあるトルソーパネルに縫い付けられた、2枚の装飾が施されたニプレスで(大部分が)覆われ、刺しゅうビーズとスパンコールが袖と首元を縁取り、スカート全体を覆っていた。これは、パリのアトリエでピエール・バルマン氏がベイカーさんのために特別に制作したドレスだった。ファッション誌エルは64年、「(ベイカーさんは)特に、要所要所にキラキラと輝く素材をあしらったモスリンのドレスが好きだ」と書いている。「ベイカーさんはすでに7着持っている。バルマン氏は8着目をデザインしたところだ」

ハリウッドのスターだったキャロル・ベイカーさんも1962年、バルマンの透明ドレスを身にまとった/Allstar Picture Library Limited/Alamy Stock Photo
ハリウッドのスターだったキャロル・ベイカーさんも1962年、バルマンの透明ドレスを身にまとった/Allstar Picture Library Limited/Alamy Stock Photo

今日のヌードドレスの多さはレッドカーペットをスペンサー・チュニック氏の写真のように見せることもある。しかし、このような「透け透け」衣装の黎明(れいめい)期には騒ぎになることもあった。とりわけベイカーさんが64年10月の夜に最新作「大いなる野望」のプレミア上映のためロンドンの「プラザ・シネマ」に到着したとき、透けたバルマンのドレスは注目を集め、ニュースの見出しを飾った。英タブロイド紙デイリー・ミラーは「キャロルはプレミアに登場した。ほとんどトップレスで」「実際にトップレスになることなくトップレスに近いドレスを着ている」と書き立てた。バルマンの「トランスペアレント(透明な)」なドレスは、バルマン氏がそう呼んだように、広く注目を集めた最初のハイファッションのネイキッドドレスの一つだった(イブ・サンローランが初めて完全なシアールックを発表したのは66年)。

欧米の女性ファッションは、60年代に入り、性の解放運動や経口避妊薬の段階的な導入のおかげもあって急速に変化していった。デザイナーのマリー・クワントさんは物議を醸すミニスカートを考案し、イーディ・セジウィックさんはボトムスを完全に否定し、代わりに今日でも言及される下着とタイツの組み合わせを好んだ。

仏高級ファッションブランドのバルマンは60年間にわたってネイキッドドレスを手掛けている/Trevor Humphries/Hulton Archive/Getty Images
仏高級ファッションブランドのバルマンは60年間にわたってネイキッドドレスを手掛けている/Trevor Humphries/Hulton Archive/Getty Images

とはいえ、ベイカーさんのヌードに近いドレスは単なる時代の象徴以上のものだった可能性がある。米紙ニューヨーク・タイムズは、ベイカーさんが64年にロンドンのプラザ・シネマで「トップレス」騒ぎを巻き起こすわずか数カ月前、ベイカーさんがスクリーン上でヌードになることをいとわないことから「ハリウッドで最も物議を醸した女性スター」と呼んだ。

ヌードは、配給会社に米国映画の基準を守らせる独立機関である映画製作倫理規定管理局(PCA)によって厳しく検閲されていた。48年のパラマウント判決(パラマウント、フォックス、MGM、ワーナー・ブラザースなどの企業に映画館を放棄させるもので、判例となる判決)を受け、映画館は突然、強力なスタジオの支配から解放された。60年代にはPCAが提起するヌード違反は20年前と比べてその意義が大幅に薄れ、映画を上映するかどうかの最終決定は映画館に委ねられていた。

ニューヨーク・タイムズによれば、ベイカーさんは「米国映画におけるヌードに関する激論の主要な対象」となっていた。これに対しベイカーさんは平然と、ほとんど予言するような調子で「ヌードは今後10年以内に映画で受け入れられるようになると信じている。映画でのヌードが国民性をそこなうとは思わない」と語った。それで、マスコミや世間がベイカーさんのスクリーン上でのヌードに大騒ぎする中、ベイカーさんはその一歩先を行き、本物をのぞかせることにしたのだ。

ファニングさんの装いは、ベイカーさんのときと比べれば明らかに物議を醸すものではなかったが、60年経った今でもネイキッドドレスが相変わらず重要であることを証明した。

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