(CNN) 最初はリアーナさんのバスローブ風ドレス、今度はジジ・ハディッドさんのDHLテープドレス。ラグジュアリーファッションは、インスピレーションを求めて私たちの鼻先(少なくとも私たちの家の中)に目を向けているようだ。
ハディッドさんは9月27日、パリ・ファッションウィークのヴェトモンのショーにドイツ貨物大手DHLの黄色と赤の梱包(こんぽう)テープをきつく巻いて登場した。この粘着テープはストラップレスのミニドレスとして取り入れられ、ハイヒールもドレスに合わせて同じテープで巻かれていた。SNSには「彼女は配達済み」「フェデックスは24時間以内に対応しなければならない」といったコメントがみられた。
このミニドレスは今シーズンのハイファッションのランウェーで見た中で特にコスト効率の良い作品の一つかもしれない。しかしテープを布地として使用するという発想は新しいものではない。ラフ・シモンズは2017年、ウールのオーバーコートを着たモデルに「Walk with Me」と「RSYP Youth Project」とプリントされたテープをベルトとして使用した。同年、廃棄された段ボールから着想を得てモスキーノのコレクションを制作したジェレミー・スコット氏は、テープでとめたストラップやディテールを施したドレスを発表した。22年にパリでバレンシアガのショーに参加したキム・カーダシアンさんは、ほぼ全身をバレンシアガとプリントされた黄色と黒の立ち入り禁止テープで覆ったいでたちで登場。話題を呼んだ。ニューヨーク・タイムズ紙のチーフファッション評論家バネッサ・フリードマン氏によれば、カーダシアンさんが歩くと衣装から「粘着テープのような音」がしたという。
ハイヒールもドレスに合わせて同じテープで巻かれている/Vittorio Zunino Celotto/Getty Images
粘着テープはもともと第2次世界大戦中に作られた。母親で軍需工場の労働者だった米国人のベスタ・スタウト氏が兵士の弾薬箱を梱包するためのより優れた方法を思いついて発明した。このテープはすぐに裂けたブーツからジープのフェンダー、間に合わせの包帯まで、あらゆるものの解決手段となった。10年代までに、粘着テープは機能的であると同時にファンション性も兼ね備えるようになった。今ではハローキティの絵が描かれていたり、暗闇で光ったり香りがついていたりするものもある。粘着テープドレスを製作することは、ファッションコンテストのリアリティー番組「プロジェクト・ランウェイ」で人気のテーマだったが、10年にはビヨンセさんをフィーチャリングしたレディー・ガガさんの受賞作「テレフォン」のミュージックビデオで、ガガさんはわずか数メートルの黄色い注意テープを身にまとい独房で体をくねらせた。
アイオワ州立大学は11年、第1回粘着テープファッションショーを開催したが、デザインは工具店の商品だけで作られたもののみとされた。このファッションショーはニューヨーク・タイムズ紙が報じた。イベントは15年に「関心が低かった」ため中止されたが、熱意あるテープデザイナーはだめになったと感じる必要はない。ヴェトモンやバレンシアガなどのブランドが型破りなこの素材に再び挑んでいることを考えると、粘着テープのロールはおそらくまだ底をついていない。