英国の自然科学者チャールズ・ダーウィンがかつて所有し、「進化論」に関連するスケッチなどを書き留めたノート2冊について、英ケンブリッジ大学図書館は24日、「盗難に遭った公算が大きい」と明らかにした。ノートは20年間紛失した状態にあり、その価値は数億円に上るとみられている。
2冊のノートのうちの1冊には、ダーウィンによる「生命の樹」のスケッチが描かれている。図書館は声明でこれらのノートについて、2000年9月、写真撮影のため希少かつ高価値な収蔵品を保管する金庫室から持ち出されたと述べた。
同年11月に撮影されたとの記録があるものの、翌年1月に定期点検を行ったところ、ノートを入れた小さな箱があるべき場所に戻されていないことが分かったという。
著書「種の起源」で生物の進化について論じた英国の自然科学者チャールズ・ダーウィン/From Herbert Rose Barraud/University of Cambridge
ダーウィンが「生命の樹」のスケッチや進化論に関する概念をノートに書き留めたのは1837年の夏。ビーグル号による世界一周の旅から帰還した後だった。この数十年後には、生命の樹の発想をさらに展開させた著書「種の起源」を出版する。
長年にわたりケンブリッジ大学の図書館員は、広大な館内でノートを紛失しただけと思い込んでいた。同図書館の棚をすべて合わせた長さは210キロ以上。所蔵する本や地図、写本は1000万冊余りに上る。
しかしノートの所在を「徹底的に」調べたところ、もはや館内には存在しないと考えられることが分かった。大学側は、盗まれた可能性が高いとしている。
なくなったものと同型のノートと収納箱/Cambridge University Library
同図書館の業務責任者は声明で、ノートの発見に全力を挙げて取り組む意向を示した。すでに地元警察に盗難届を出したほか、国際刑事警察機構(インターポール、ICPO)が管轄する盗難被害にあった文化遺産データベース「サイキ(Psyche)」への登録も済ませているという。
ノートの内容は過去にデジタル化され、ケンブリッジ・デジタル・ライブラリーに収蔵されている。大学も引き続きノートの探索を行う計画で、完了まで5年かかると見込んでいる。