TikTokのCEOを厳しい質問攻め、米公聴会での初証言に見る5つのポイント

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米議会の公聴会で議員からの厳しい質問を受けるTikTokのチュウCEO/Al Drago/Bloomberg/Getty Images

米議会の公聴会で議員からの厳しい質問を受けるTikTokのチュウCEO/Al Drago/Bloomberg/Getty Images

ニューヨーク(CNN) 中国系動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」のショウ・チュウ最高経営責任者(CEO)が23日、米連邦議会の公聴会で初めて証言し、国会議員らから厳しい質問攻めを受けた。議員らは同社による米国内のユーザーデータ保護の取り組みに極めて懐疑的なほか、同社と中国とのつながりにも懸念を抱いている。

インタビューなどに答えることがほとんどないチュウ氏の言葉が公の場で聴かれるのは珍しい。ただTikTokは米国で最も人気のアプリの一つであり、1億5000万人を超えるアクティブユーザーを抱える。

23日の公聴会で明らかになった最大のポイントは以下の通り。

TikTokについて既に立場を決めたワシントン

5時間以上続いた公聴会は1人の議員による米国でのTikTok禁止の呼びかけで幕を開け、終始闘争的な雰囲気に包まれた。そこで浮き彫りになったのは同アプリに対する超党派の圧力と、会社側が図る米政府との関係改善の難しさだ。

下院エネルギー商業委員会の委員長を務めるキャシー・マクモリス・ロジャース議員(共和党)は冒頭、チュウ氏に対し「あなたのプラットフォームは禁止されるべきだ」と告げた。

チュウ氏は証言を通じ、TikTokは中国から独立しており、米国との関係を重視していると強調。「TikTok自体、中国本土では使用できない。我が社の本社はロサンゼルスとシンガポールにある。現在米国に7000人の従業員がいる」と述べた。

それでも米国のデータに外国からアクセスされる可能性や、TikTokの米国でのエコシステムが操作される恐れについて重大な懸念があることは承知しているとし、そうした懸念には実際の行動で対応してきたとの見解を示した。

TikTokは中国で運用されていないが、中国政府は管轄下に置く企業に対し重大な影響力を行使する。TikTokの親会社バイトダンスもまた広範囲にわたる安全保障上の活動への協力を強いられる可能性があるというのが定説で、それにはTikTokのデータの引き渡しも含まれる。

多くの議員はチュウ氏の証言に耳を貸さず、同氏への不信感を口にして証言を遮る議員の姿も見られた。

ロジャース委員長は公聴会を視聴する米国民に向けて「TikTokはあなた方をスパイし、あなた方が見るものを操作し、将来世代を搾取するための中国共産党による武器だ」と語りかけた。

チュウ氏はカリフォルニア州選出のアンナ・エシュー議員(民主党)とのやり取りで、米国のユーザーのデータは米国国内で米国企業により保管されていると説明。中国政府がそれらのデータにアクセスした証拠を確認したことはないと述べ、アクセスへの依頼を受けたことも、こちらからデータを提供したこともないとした。

業務慣行で米ビッグテックとの違いなしと強調

チュウ氏はまた、TikTokが収集しているデータについて、テクノロジー業界に属する他の多くの企業も頻繁に収集している内容だと強調した。

これまで複数の独立した調査研究が、チュウ氏の主張を裏付けている。2020年に米紙ワシントン・ポストがある調査機関と協力して調べたところ、TikTokは一般的なソーシャルメディアで流れる以上のデータを一切収集していないとみられることが分かった。

翌年には、カナダ・トロント大学の研究機関に所属し台湾を拠点に活動する研究者が別の技術分析を通じ、同様の結論に達してもいる。

とはいえ、たとえTikTokの収集する情報量がフェイスブックやツイッターと大体同等だとしても、相当に膨大なデータが集められていることに変わりはない。そこにはユーザーの視聴した動画や書き込んだコメント、送信した私的なメッセージが含まれる。ユーザーがアクセスを許可した場合は、本人の正確な位置情報や連絡先リストも入手可能となる。

(23日、チュウ氏は現行バージョンのTikTokについて、米国のユーザーからの正確な GPS<全地球測位システム>情報は収集していないと述べた)

子どもへの影響が重要な焦点に

当初は国家安全保障が公聴会の第一の焦点になると予想されたものの、数多くの議員が同様に強調したのは、TikTokの子どもへの影響に関する懸念だった。

例えば委員会の幹部にも名を連ねるニュージャージー州選出のフランク・パローネ議員(民主党)は、「調査の結果、TikTokのアルゴリズムが10代の若者に勧める動画は精神的苦痛を感じさせ、悪化させる内容であることが分かっている。具体的には自殺や自傷行為、摂食障害を取り上げる動画だ」と指摘した。

またオハイオ州選出のボブ・ラッタ議員(共和党)は、TikTokがいわゆる「ブラックアウト・チャレンジ」についての動画を推奨していると非難した。故意に窒息して失神する様子を捉えたこれらの動画を巡っては、視聴したペンシルベニア州の10歳の少女がまねをした後に死亡する事故が起きていた。

フロリダ州選出のガス・ビリラキス議員(共和党)も、動画内容を適切に緩和する措置が取られていないと批判。子どもたちは自傷行為を推奨するコンテンツが視聴可能な状態に置かれているとし、チュウ氏に向けて「あなたの技術は文字通り、死につながっている」と告げた。

TikTok側はこうした声に反応し、この数カ月で数多くの機能を導入。より若いユーザーのために追加の安全措置を講じている。18歳未満のユーザーの視聴時間を1日60分に制限する機能はその一つだが、議員らからは簡単にすり抜けることが可能だとの批判が噴出した。

答弁避けているとCEOに非難、一方会社側は答弁に関心がないと不満

議員からは、質問に直接答えようとしないとしてチュウ氏を非難する発言が出た。2018年に同様の公聴会に出席し、一部の議員を苛(いら)立たせた米メタのザッカーバーグCEOになぞらえる議員もいた。

これに対しTikTokは、議会の方がチュウ氏の答弁に関心を示さなかったと不満を表明。広報担当者が公聴会後の声明でCNNに対し明かしたところによれば、チュウ氏は事前に答弁の準備をして公聴会に臨んでいたという。しかし実際の公聴会は政治的なスタンドプレーが幅を利かせ、本当の解決策がすでに実施されていることを確認するに至らなかったと、この担当者は指摘した。

公聴会の最中には、動画内容や中国とのつながりについて批判されたチュウ氏が「答弁をさせてもらえますか?」と尋ねた際に、議長を務めるロジャース委員長が「いいえ、次の議題に移ります」とこれを退ける一幕もあった。

政府は自らの言説を強化

公聴会が行われている部屋の外では、TikTokにまつわる自分たちの言説を強化する連邦政府の当局者の姿が見られた。

ブリンケン国務長官はTikTokについて「どうにかして終わらせるべきだ」「そうするためにはいろいろな手段がある」と述べた。別に開かれていた下院外交委員会の公聴会での発言で、同氏は中国の親会社からの売却だけで十分かどうかはわからないとの見方を示した。

財務省も23日に声明を出し、データのやり取りに関する国家安全保障上の懸念に言及。同省の報道官はTikTokを名指しこそしなかったものの、未解決の国家安全保障上の懸念が存在する限りいかなる取引も認められず、「大まかに言って、一部のやり取りにはデータの安全保障上のリスクが存在し得る」と述べた。具体的には外国の人物や政府が米国の貴重な個人データや知的財産、潜在的に機微な情報などにアクセスできるようになる恐れがあるという。

公聴会でチュウ氏は、アプリを巡る長年の懸念の緩和を図りつつ、中国政府がTikTokのユーザーデータにアクセスするとの不安を「仮説に基づくもの」と一蹴した。

その上で、実際にリスクが存在するとの証拠が示されれば、それについて議論し、そこから生じる懸念に対処することも可能になると述べた。

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