オオメジロザメとダイビング 海中ツアーに賭けるキューバ
ラザロさんは水に入るとすぐに、サメとのダイビング体験のために数匹のフエダイを槍(やり)で捕獲した。ラザロさんによれば、サメを呼び寄せるためだが、過剰に刺激することは避けたいという。
水深80フィート(約24メートル)以上の海中で、100年以上前に沈んだスペインの難破船のそばを泳いでいく。ラザロさんが振り返り、片方の手で頭上にひれのサインを出した。
始めのうち、見渡す限り青一色の海水からは何も見えなかった。すると突然、1匹のオオオメジロザメが視界に飛び込んできた。
サメがあたりを周回する中、我々は海底に座った。サメの全長は筆者の身の丈より長い。もう1匹サメがやって来て、ラザロさんが放った魚を一緒にすばやく飲み込んだ。ラザロさんがサメの口に直接魚を与え、口が閉じる前にさっと手を引っ込めた。
大きい方のサメは漆黒の瞳で筆者を見据え、こちらの方向にまっすぐ進んできた。ガイドの指示を思い出す。決して慌ててはいけない。泳ぎ去ったり、暴れたりしてはいけない。そうでないと、こちらがけがをしているとか、格好の獲物だという印象をサメに与えてしまう。
心臓は早鐘のように鳴っていたが、サメの細部をまざまざと目の当たりにて感嘆せずにはいられなかった。サメが筆者の後方へ回る。ラザロさんとオロさんの「OK」の合図を確認しつつ、後ろを振り返った。
サメは筆者をチェックしているんだろう、おそらく。
数秒間、筆者は周回していたサメから目が離せなかった。まるでこの世にはサメ以外何も存在しないかのようだった。この後襲ってくるだろうか、あるいはもっと間近で見ようと近づいてくるだろうか。ガイドはどうやって守ってくれるのだろう。
ほんの数十センチ離れているだけでも興奮ものだった。ガイドが約束した通り、すでに人生最高のダイビング体験だった。ありがたいことに、筆者はサメにすっかり魅了されていたが、サメの方は違ったようだ。
何度か近くを通り過ぎた後、サメは興味を失ってゆっくり泳ぎ去っていった。