全長24キロ、総工費9400億円の橋が象徴する中国の野心と問題
一帯一路のプロジェクトを巡っては、国際社会で経済的・政治的影響力を高めようとする中国の試みのひとつだとの見方が多い。返済できそうもない融資を行うことで、中国が小国に影響力をふるっていると批判する人もいる。
今度の橋は中国国内で建設されるのでそうした債務の懸念はないものの、プロジェクトの規模からメッセージが伝わってくると識者は語る。
「中国政府は、今度の橋を世界最大級の業績だとはっきり謳(うた)っている」とストレンジ氏。「インフラはグローバル開発における中国の評判の要であり、国内開発と国際開発を連動させるうえでもカギになる」
とはいえ諸外国をどこまで感心させられるかは、橋の大きさのみならず、最終的に橋がどのぐらい利用者から支持され、利用されるかによるだろう。
さもなければ中国は、一帯一路政策の巨大プロジェクトの一部がしばしば直面する「金ばかりかかる無用の長物」との批判にさらされることになる。
金融学を専門とするシカゴ大学の何治国教授によれば、サンフランシスコ湾の沿岸地域をつなぐ橋と同じように、中国の巨大事業も移動時間を削減することになりそうだ。
だが、得をするのは地元中山市の住民だけだろうと教授は言う。ビジネス街でもなければ観光地でもないのどかな街には、これといって外から人を引きつける誘因はない。
また教授いわく、プロジェクトは容易に肥大化しうるので、移動時間や費用への影響についての試算は話半分に聞いておくべきだ。「それが私の懸念だ。だがこれ以上情報がないので、悪い話ではないと思う」
荒波に架ける橋
中国政府のグレーターベイエリア構想は野心的だが、すでに山あり谷ありの状態だ。
最初に構想が持ち上がったのは09年だが、専門家によると、エリア内の都市間に見られる特色の違いや障壁が、開発の妨げになっているという。
このエリアには三つの境界が含まれている。中国本土と、現在は中国の特別行政区になっている元植民地の香港、マカオはそれぞれ異なる出入境制度と法体系を持ち、通貨も異なる。
それに加え、住民は三つの異なるパスポートと身分証明書を携帯し、二つの中国語(広東語と標準中国語)を話す。
車の運転も右側通行と左側通行に分かれている。これらを総合すると、各都市を気軽に陸路で移動したいと思っても、山のようなハードルが待ち構えている。