全長24キロ、総工費9400億円の橋が象徴する中国の野心と問題
深中通道の姉妹プロジェクトである港珠澳大橋が18年に開通した際、こうした問題の一部はすでに明らかだったという批判もある。
港珠澳大橋は中国本土の珠海市、カジノの街マカオ、世界有数の金融都市である香港を結んでいる。
開通1年後の19年になっても橋は交通量に伸び悩み、香港運輸署によれば1日の利用件数はわずか4000件だった(これに対して英国とフランスを結ぶ欧州の英仏海峡トンネルの場合、公式ウェブサイトによれば今年3月にトンネルを利用した車両は1日平均8000台以上だった)。
専門家は反応が鈍い理由として、3都市間の移動に複数のビザと車両登録が必要な点を挙げている。3都市間を行き来する高速フェリーがすでに毎日運航しているのだから、なおさらだ。往々にしてフェリーが出発するターミナルは、橋の乗り入れ口となる境界付近よりもアクセスしやすい。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)中、港珠澳大橋の交通量は1日数百台にまで落ち込んだ。厳しい「ゼロコロナ」政策の一環で、3都市とも都市封鎖したためだ。もっともパンデミック以降は持ち直している。国営メディアの報道によれば、今月の労働節では1日に最大9000台の車両が橋を利用したそうだ。
一方で、橋をめぐる論争は純粋な金銭問題にとどまらない。
橋を政治的スタンスだと見る向きもある。反対派は、14年と19年に民主主義運動に揺れた香港を強制的に中国と同化させ、影響力を行使する道具として港珠澳大橋が利用されていると批判している。
ご心配なく、「渋滞するだろう」
それでも、橋を応援するファンもいる。
香港中文大学深セン校の肖耿氏は、深中通道をきっかけに二つの地域の水準があがるだろうと語る。
「海岸の西側は東側ほど開発が進んでいない。両岸は不動産価格でも大きな開きがある」(肖耿氏)
また肖耿氏は、3都市の「根本的に異なる」制度に悩まされ、移動費の高さから人々の足が遠のいていた以前の橋とは違うとも語った。
今度の橋は中国本土の2都市を結ぶことになるので、制度は同じだと肖耿氏は指摘した。
「ご心配なく。きっと渋滞するだろう」(肖耿氏)