イラクの遺跡に危機迫る、世界遺産ハトラも武装勢力が占拠
バグダッド(CNN) イスラム過激派「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が勢力を広げるイラクで、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に指定された貴重な遺跡が危機にさらされている。
メソポタミアは紀元前数千年から文字や数学、天文学、文学、法律が発達していた地として知られる。
しかしイラク博物館の専門家によると、神殿などの破壊を続けるISISは遺跡から彫刻を切り出して犯罪集団や古物商に売り飛ばしているという。数千年前の彫刻などもほとんどは「頭部が切り取られて足が残っている。頭の方が貴重だから」と専門家は話した。
6月に制圧されたモスルは危機的状況で、特に南部にある紀元前3世紀の古代都市ハトラの遺跡の状況が懸念される。ISISは数カ月前にハトラを制圧し、武器や弾薬の保管、戦闘員の訓練、捕虜の処刑に使っているという。
城壁に囲まれた街には塔や宮殿、寺院、銅像など貴重な建築物が残る。「ISISがとんでもないことをするのではないかと不安だ」と専門家は危惧する。モスル博物館もISISに占拠された。収蔵品がどうなったかは不明だ。
ユネスコもハトラをはじめイラク国内の遺跡の状況に危機感を示し、同国の文化遺産を守り、特に文化遺産の不正取引を阻止するため国連や国際社会に働きかけると表明した。
ただ、激しい戦闘が続く現状では、遺跡を守るために打つ手はほとんどないのが現状だ。