太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<上> 米エネルギー政策の要に影
(CNN Business) 中国の新疆はここ20年間で、太陽光パネル製造に必要な部品を世界に供給する多くの企業にとって、主要な生産拠点に成長してきた。
しかし新たな研究によると、こうした仕事の大半は、ウイグル族など新疆の民族的・宗教的少数派への搾取に依存している可能性がある。気候変動対策に欠かせない再生可能エネルギー源のサプライチェーン(供給網)は大部分が強制労働に「汚染」されている可能性があるという。
今回の報告書は14日、「白昼堂々――ウイグル強制労働と世界の太陽光サプライチェーン」との題名で発表された。クリーンエネルギーの構成要素は環境に悪い石炭と強制労働で作られている可能性があるという、憂慮すべき実態の証拠を提示している。
中国は新疆での人権侵害疑惑について繰り返し否定してきた。
CNN Businessは中国外務省に報告書に関するコメントを求めたものの、回答は得られていない。ただ、外務省の華春瑩報道官は12日、新疆での強制労働が太陽光パネルのサプライチェーンを汚染しているとの疑惑について聞かれ、「言語道断のうそ」との見方を示した。
華報道官は記者団に対し、「一部の欧米諸国や反中国勢力はこれまで、新疆の綿花栽培産業におけるいわゆる『強制労働』をでっち上げることに躍起になっていた。それが今度は太陽エネルギー産業をやり玉に挙げている。新疆の綿にはシミひとつなく、太陽エネルギーもクリーンそのものだが、この問題をでっち上げる欧米の人間には暗い悪意がある」としている。
太陽光パネルの主要材料となるポリシリコン(多結晶シリコン)の生産をめぐっては、新疆での強制労働が利用されているとの疑いがかねて提起されてきた。しかし今回の研究では、サプライチェーンの起点となる原材料の石英に関しても、採掘と加工に強制労働が利用されている実態が示されている。
報告書は「太陽エネルギーに対する世界的な需要を受け、中国企業は環境への責任を可能な限り安く済ませることに注力してきた」「だが、それに伴い、サプライチェーンの起点で働く労働者は多大な犠牲を強いられている」と指摘する。
報告書は英シェフィールドハラム大学のヘレナ・ケネディ国際司法センターで人権と現代奴隷制について研究するローラ・マーフィー教授と、ウイグル自治区で19年間生活していたサプライチェーンアナリストのニロラ・エリマ氏が共同執筆した。エリマ氏のいとこは新疆の収容所に送られており、CNNは以前、同地に住むエリマ氏の家族について報じたことがある。
報告書は中国語、ウイグル語、英語に堪能な強制労働とサプライチェーンの専門家複数人の力を借りて編集された。企業の公開情報や政府発表、国営メディアの記事、ソーシャルメディアの投稿、産業リポート、衛星画像を数百点を引用し、30社以上について各社のサプライチェーンに強制労働が存在しないか調査した結果を詳述している。
米政府はかねて、新疆に住むウイルグル族などのイスラム教徒少数派のうち、最大200万人が再教育施設に収容されていると主張。欧米政府や人権団体は同地域の少数派をめぐり、虐待や洗脳の試み、強制労働の対象になっていると訴えてきた。ITや農業、毛髪貿易を含む多くの産業に対し、サプライチェーンの問題を指摘する声が寄せられている。
一方、中国政府は新疆での人権侵害を繰り返し否定。同地域にある施設は「職業訓練センター」であり、職業スキルや中国語、法律を学ぶ場だとしている。