太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<下> 汚れたサプライチェーン
(CNN Business) 今回の報告書では、強制労働疑惑の影響が太陽光パネルの供給網(サプライチェーン)全体に及ぶ一例として、新疆の企業ホシャイン・シリコン・インダストリーが挙げられている。ホシャイン社は金属級シリコンの世界最大の生産者。金属級シリコンは採掘した石英を砕いてつくられる素材で、ポリシリコンの主要メーカーに売却される。
報告書は、中国政府が農村の「余剰」労働力をホシャインの工場に配置していると指摘。そこに引用された中国国営メディアの2017年の記事によると、ある地方政府機関は、余剰労働力の訓練プログラムにより労働者5000人を同社に供給できると説明したという。
ホシャインはまた、地方政府と同様の機能を持つ準軍事複合企業の新疆生産建設兵団(XPCC)から、「農村余剰労働力」に実施した訓練の補償金を受け取っている。米財務省の外国資産管理室は昨年、新疆の「少数民族に対する深刻な人権侵害」に絡み、XPCCに対する制裁を発動した。
報告書は政府が同社に代わって行う採用活動について、「非自発的な労働を示唆する抑圧的な戦略に基づくもの」と指摘する。
新疆にあるホシャインの施設では、肉体労働者が1トンにつき42人民元(約6.5ドル=約700円)の支払いを受けて手作業でシリコンを砕いているという。
ホシャインの工場は新疆のトルファン市付近にある工業団地に位置する。報告書によると、ホシャインの工場はこの工業団地の北部地区にあり、そこから数キロ離れた団地の南部地区には、新疆の少数派への虐待疑惑を調べる豪戦略政策研究所(ASPI)によってウイグル族「再教育」のための収容施設と特定された2施設もある。報告書では、団地内にあるホシャインの工場の労働者が直接、これらの収容施設から来ているのかは不明としている。
ホシャインに報告書についてCNN Businessからコメントを求めたが、返答はなかった。
Sources: Maxar Technologies (satellite image), “In Broad Daylight: Uyghur Forced Labour and Global Solar Supply Chains” by Laura Murphy and Nyrola Elimä, Australian Strategic Policy Institute
金属級シリコンをポリシリコンに純化する過程では、極端な高温と電力の大量消費が必要となる。報告書によると、新疆には政府の補助金を受ける巨大な石炭産業があり、その点も新疆が太陽光パネル部品の拠点になっている理由の一つだという。
ホシャインはこの地域の主要な原材料供給業者の一つ。このため報告書では、同社の施設で強制労働でつくられた疑いのある部品が、他の太陽エネルギー企業の販売する製品に入り込んでいると主張している。
こうしたホシャインの顧客の一つがダクォ・ニュー・エナジーだ。同社は上場企業で、調査会社バーンロイター・リサーチによると、2020年にはポリシリコンメーカーで世界3位の規模となった。ダクォの原材料の3分の1はホシャインから調達されており、中でもポリシリコンは100%が新疆で生産されていると、報告書は指摘する。
ダクォの幹部は、新疆にある同社の施設で強制労働が利用されているとの主張に反論。取締役会書記でIR責任者のケビン・ヒー氏は研究チームのコメント要請にメールで回答し、同社は国主導の労働力移転プログラムに参加しておらず、新疆の施設の従業員2021人のうち民族的少数派は18人のみだと述べた。
しかし報告書の著者らは、ダクォ社自身の慣行にかかわらず、ホシャインから原材料を購入している以上、製品に強制労働の影響がないと保証することはできないと指摘する。
報告書の著者の1人、マーフィー氏は「ダクォのサプライチェーンは汚染されており、今後はもう誰もその点から目をそらさないだろう」と語った。