太陽光パネルの供給網、新疆の強制労働に依存か<下> 汚れたサプライチェーン
SEIAは先月、製品に使われている部品の調達先を顧客に証明するのに使える「ソーラー・サプライチェーン・トレーサビリティー手順」を公表。「米国に輸入される製品にあの(新疆の)地域から来るものはなく、強制労働で作られたものはないと保証できるツールを加盟各社に提供したかった」とスマーナウ氏は語る。
太陽光のサプライチェーンに強制労働はないと保証するための行動呼びかけには250社近い企業が署名した。これにはジンコソーラーの米国部門やJAソーラー、ロンジ・ソーラー・テクノロジーズの米国部門、トリナ・ソーラーの米国部門、エスパワーが含まれる。
こうした署名により、ほぼ産業全体でこの問題に対処していくことが約束されたことになる。一方で、署名企業の多くは新疆の強制労働で作られた原材料を買わないようにするため「大きな変更に迫られる」とも報告書は指摘する。
今回の報告書の目的は、SEIAの手順を実行しようとする企業に対して、サプライチェーンに潜む問題点の特定を支援する点にもあった。
専門家によると、欧米のニーズを満たす助けとなる太陽光パネル部品の供給業者は新疆や中国以外にも存在する。しかし、中国が新疆での操業に補助金などの支援を提供していることを踏まえると、よそからの調達はコストがかさむ可能性がある。
新疆は世界の太陽光パネル供給網と密接に絡み合っており、供給システムから完全に切り離すのは難しそうだ。ジンコソーラーを例に取ると、同社米国部門の幹部はSEIAの理事に名を連ねている。SEIAは米国の太陽光企業に新疆からの部品購入停止を呼び掛けており、ジンコも先月、強制労働排除などを掲げる「国連グローバル・コンパクト」に加わった。だが、ジンコは依然として新疆で工場を操業し、ダクォからポリシリコンを調達しているのが実情だ。
ジンコソーラーに新疆での操業や部品調達を停止する計画があるかコメントを求めたところ、同社米国部門の広報は、米国向けのサプライチェーンでは新疆から部品を調達していないと改めて説明。「ジンコには労働慣行で業界をリードしてきた強力な実績がある。自発的な雇用、一律の割増賃金や福利厚生、工場の全従業員に対する定期休暇などだ」と述べた。
バイデン政権は現在、米国でグリーンエネルギーの使用を拡大する方法を検討中。研究チームやSEIAのスマーナウ氏は、米国内での太陽光パネル部品製造に投資することで、責任ある成長の確保につながる可能性があるとの見方を示す。
研究チームのマーフィー氏は「中国政府が新疆で収容所や強制労働プログラムを運用している限り、いかなる企業もそこに工場や子会社を持つべきではない」と指摘。「絶対にだ」と強調した。