パウエルFRB議長、関税の経済的影響めぐり厳しい警告 「現代にない経験」

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長/Erin Hooley/AP

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長/Erin Hooley/AP

(CNN) 米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は16日、トランプ大統領が打ち出した関税を含む大幅な政策変更は現代史に類例がなく、FRBを未知の領域へ追い込むものだとの認識を示した。

パウエル氏はシカゴ経済クラブ主催のイベントで、「これは根本的な政策転換だ」と指摘。「これについてどう考えるべきかという経験は現代にはない」と述べた。

パウエル氏はまた、「これまでに発表された関税引き上げの水準は予想を大幅に上回る」と述べ、関税を巡って残る不確実性が経済に永続的な打撃を与える可能性があると警告した。トランプ関税は成長減速と失業増加、インフレ加速を一挙に招く可能性があり、FRBはほぼ半世紀ぶりの難局を迎えている。

パウエル氏は「我々は二つの使命が齟齬(そご)をきたす難しい局面に直面するかもしれない」とも述べた。

パウエル氏の発言中、米国株は急落し、ダウ工業平均は700ドル(1.7%)、S&P500指数は2.5%下落した。ハイテク株中心のナスダック総合指数も3.5%下げた。 

FRBは「完全雇用の促進」と「インフレ抑制」という二つの責務を負うが、トランプ関税はその両方の目標を脅かしている。ただし直近のデータによれば、足下の米国経済はおおむね堅調を保っている。

パウエル氏は、米国経済がトランプ氏の政策にどう反応しているか統計で明確に示されるまで、当面は現状の方針を維持するのが最善だとの認識を示した。

ただ大半のエコノミストによれば、9日に短時間発動された大規模な「相互」関税が復活すれば、インフレを高進させて失業率を押し上げ、成長を鈍化させるのは時間の問題とされる。トランプ氏はこの歴史的な輸入関税の引き上げを7月まで延期している。

トランプ氏はこれまで、アルミと鉄鋼に25%、自由貿易協定に適合しないメキシコとカナダの製品に25%、中国からの輸入品に145%の巨額関税を課した。自動車には25%を課しており、自動車部品にも後日別途関税を課す予定だ。すべての輸入品を対象にした一律10%のベースライン関税も導入した。

政権は一部の電子製品については、一時的に関税適用を免除した。トランプ氏は半導体や医薬品、銅、木材に対しては個別関税を課す可能性が高いとしている。

トレードステーションのマーケット戦略責任者、デビッド・ラッセル氏は16日、「パウエル氏はトランプ氏に対して方針を突きつけた」と指摘。「これはスタグフレーションに関する明確な警告であり、利下げでホワイトハウスを助けることはないとの宣言だ」との見方を示した。

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