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対中貿易戦争に直面、トランプ氏が仲間集めに躍起になる理由

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港湾に見えるトラックと輸送コンテナ=8日、中国東部江蘇省南京/AFP/Getty Images

港湾に見えるトラックと輸送コンテナ=8日、中国東部江蘇省南京/AFP/Getty Images

(CNN) 米国は友人を取り戻したいのだろうか?

3カ月にわたって主要同盟国を侮辱し、関税をかけ、併合までほのめかしていたトランプ政権が突然、助けを必要とする状況に陥っている。

トランプ大統領はここにきて中国との全面的な貿易衝突をエスカレートさせているものの、勝利の方法は分かっていないようだ。そこで政権は、トランプ氏の威圧に屈する気配のない中国の習近平(シーチンピン)国家主席に対していかに優位に立つか、慌ただしく検討している。

だが、有効かもしれない策が一つだけある。米国の力と世界の力を結集すれば、市場開放や知的財産の窃盗、産業スパイなど米国が一貫して不満を訴えてきた問題に取り組むよう、中国政府に圧力をかけることができるかもしれない。問題はただ一つ、このアプローチがトランプ氏の掲げる「米国第一」のスローガンと矛盾する点にある。

ベッセント財務長官は今週、FOXビジネスの番組で、日本や韓国、インドなどの友好国やベトナムとの間で近く貿易交渉が行われる見通しだと明らかにした。

「あらゆる国が交渉のテーブルに着き、中国は基本的に包囲される形になる」とベッセント氏は指摘。協議では共通の目標を議題に据えるべきだと言い添え、「いかにして中国にリバランス(不均衡の是正)させるか。それがここでの大きな成果になる」と言及した。

ホワイトハウスのレビット報道官に対しては10日、トランプ氏が友人も敵も一絡(から)げに扱っている状況で、同盟国が中国と対抗する米国の支援に回る理由はあるのかという質問が飛んだ。これに対し、レビット氏は「我々に連絡を取ってきている同盟国に聞いてほしい。ひっきりなしに電話がかかってきている。彼らは米国が必要だとはっきり表明しており、我々の市場、消費者基盤を必要としている」と答えた。

しかし、トランプ氏が大統領執務室に戻ってから行ってきたことと言えば、志を同じくする民主主義国家のグループを破壊するようなことばかりだ。トランプ氏は今週数回にわたって欧州連合(EU)を非難し、「私は常々言っているが、あれは米国に貿易上の打撃を与える目的で結成されたものだ」と発言した。

欧州を目の敵にしているのはトランプ氏だけではない。バンス副大統領も、ミュンヘン安全保障会議やイエメンへの空爆に関する当局者のグループチャットで、欧州への反感をあらわにしていた。

西半球におけるトランプ氏の憎悪も問題になる。

北米の巨大な統合貿易圏はかねて、中国に対する潜在的な防壁になりうると見られてきた。しかし、トランプ氏はカナダを乗っ取るとの脅しを繰り返し、メキシコに対しては最も厳しい水準の関税を課す考えを示している。カナダのカーニー新首相は、米国との伝統的な関係は終わりを迎えたと警鐘を鳴らした。

もっとも、中国の貿易慣行の変化を促すために共同戦線を構築するという発想自体は妙案だ。なぜこれまで誰も思いつかなかったのか、不思議に思えるほどだ。

実際、そうした案はあった。そしてトランプ氏がそれを潰したのだ。

トランプ氏は2017年の1期目就任初日、メキシコやカナダ、日本、オーストラリアなど米国の友好国を含む12カ国で構成され、中国は含まれていなかった「環太平洋経済連携協定(TPP)」からの離脱を表明した。さらに、世界の2大市場を連結させるはずだった「環大西洋貿易投資協定(TTIP)」も頓挫させた。

現在の問題は、トランプ氏が米国の友好国をあまりに離反させてしまい、彼らがもはや電話に応じないのではないか、という点にある。

「いまの米国は世界のどの国から見ても全く信頼できないパートナーであり、どうすれば信頼を取り戻せるのか私には分からない」。オバマ政権時代に大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を務めたジェイソン・ファーマン氏は10日、CNNの取材にそう語った。

本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者による分析記事です。

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