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関税で諸外国を罰すると語るトランプ氏、実際に罰せられているのはほぼ米国人

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トランプ氏の関税演説を受け、株式市場はコロナ流行期以来の水準で売り注文が殺到した/Carlos Barria/Reuters

トランプ氏の関税演説を受け、株式市場はコロナ流行期以来の水準で売り注文が殺到した/Carlos Barria/Reuters

ニューヨーク(CNN) これは深刻な問題だ。我々は一体、何をやっているのか?

市場は崩壊し、ビジネスリーダーたちはパニックに陥っている。消費者は、ニュースを読んでいればの話だが、当然混乱もしくは恐怖している。それともその両方か。エコノミストたちはトランプ政権の関税政策を凝視し、どうにかしてその意味を理解しようと試みる。

ここで、その他の呆然(ぼうぜん)としている人たちに助言したい。意味を理解しようとするのはやめよう。

どういう理屈か? どうせ理解などできないのだ。我々がこれまで書いてきた通り、トランプ米大統領が定めた自らの関税政策のゴールは矛盾に満ちている。政権が貿易相手に対する「相互」関税の算出に使用していた計算式でさえ、数学というよりはパフォーマンスアートに近い代物だ。

米国の経済は世界の羨望(せんぼう)の的だが、トランプ氏はそれが他国による不公平な貿易慣行の犠牲者と考える。同氏の理論によれば関税こそ平等な競争を実現し、米国の製造業を復活させる一挙両得の手段だ。その点でトランプ氏の立場は揺るがない。仮にそれが米国経済をリセッション(景気後退)に突き落とすことを意味するとしても。

トランプ氏は関税が諸外国に打撃を与えると主張する。それは間違いではない。しかし同氏はこれまでのところ、関税が無用な罰則として米国人にものしかかることになるという事実に対し、無視を決め込んでいる。

どういうわけか米国政府は今、国内で生産できない製品について、米国人により多くの金額を支払わせようとしている。たとえばコーヒー。特定の種類のワイン。ハイテク産業に不可欠なレアアース(希土類)。他にも挙げれば切りがない。

そして恐らく最も非現実的なことに、トランプ氏は我々が過去数十年のグローバリゼーションをなかったことにし、既に海外へ移転してしまった製造業の仕事を取り戻せると信じているようだ(仮にそうした産業の「国内復帰」ができるとしても、それには長い年月がかかるだろう)。

ピーターソン国際経済研究所の上級研究員、メアリー・E・ラブリー氏は3日のブルッキングス研究所のイベントで、「戦略がない」「我々に自分たちの下着を自分たちで編めというのか?」と問いかけた。

「米国には製造業が必要と人々が口にするとき、彼らの念頭にあるのはハイテク企業であり、持続可能な仕事だ」。そうラブリー氏は続ける。低技能かつ労働集約型の仕事ではなく、そうした仕事は既に途上国へ移転されているとした。

その上で、誰でも帰宅して寝室に入る際、自分の着ている服がどこで作られたか確認すればいいと進言。それらの全ての国々に対し、米国は巨額の貿易赤字を抱えていると述べた。

まずい計算

ラブリー氏らが指摘するように、貿易赤字の不均衡を解消したいのであれば、そのための戦略的な方法が必要になる。代表的なエコノミストや政策の専門家を集めて個々の貿易協定にメスを入れ、どこで影響力を発揮できるかを見極める。

ところがトランプ政権は、骨の折れるドル単位の検証を通じ、個々の貿易相手国との適切な関税率を確定しようとはしていない。

そうではなく、相手国との貿易赤字額を米国への輸出額で割り、その数字を2で割る。それだけだ。

多くのアナリストは、そのような乱暴なやり方に衝撃を受けている。

ウェドブッシュ証券のアナリスト、ダン・アイブス氏はトランプ政権が関税を説明した図表について、中高の基礎的な経済の授業でも一笑に付されるレベルだと示唆。前出のラブリー氏は、医師の診察を受けてがんが見つかったにもかかわらず、ダイエットで治そうとするようなものとの認識を示す。

エコノミストで作家のジェームズ・スロウィッキー氏が当該の相互関税の算出方法について分析すると、ホワイトハウスはギリシャ文字を使った見るからに恐ろしい数式を発表して、同氏の間違いを指摘しようとした。世界の経済政策を大きく変えるに当たり、自分たちは極めて洗練された数式を用いたのだとする印象づけを図ったわけだ。

結果的に、その数式は威力を発揮した。複数の記号を配したことでより複雑な見た目となり、関税政策に疑問を呈する人たちをたじろがせた。エコノミストのブレンダン・デューク氏は記者にそう述べた。

これは経済政策とは言えない。経済政策の皮を被ったロシアンルーレットだ。

CEOの口から悪態

トランプ氏がジョージ・オーウェル的な「解放の日」の演説を行って以降、世界の反応は必ずしも祝福ムードではない。

株価はほぼ直後に急落し、数兆ドル相当の時価総額が一夜にして吹き飛んだ。米国の主要な三つの株価指数は1日の下げ幅で2020年以来最悪となる数値を軒並み記録した。

各国首脳も強い驚きを表明し、フランスやカナダのような同盟国を含め、一部の国々は報復を約束した。石油価格は6%以上下落。自動車大手ステランティスは関税発効を受け、カナダとメキシコにある一部の工場で生産を一時停止し、米国の従業員900人を一時解雇すると明らかにした。

高級家具会社RH(前リストレーション・ハードウェア)の最高経営責任者(CEO)は2日の電話会議の間、自社の株価が40%下がったのを目の当たりにした。トランプ氏の演説後、間もなくのことだ。同CEOがこの後発した2語に、その日他の全てのCEOが抱いた思いが集約されている。「ああ、畜生め」

ナイキやアップルなどの多国籍企業の株価も打撃を受けた。安いアジアからの輸入品に頼る複数の小売企業も同様だ。

「この政策決定は、自爆テロに等しい」。サード・セブン・キャピタルの市場ストラテジスト、マイケル・ブロック氏は、記者の同僚に向かってそう言った。「彼らは古典的なミクロ及びマクロ経済のあらゆるルールを無視している」

つまりそれがウォール街の声だ。トランプ氏は以前ウォール街について、自身の大統領職をリアルタイムで評価する成績表と位置づけていた。

しかし3日、同氏は市場の反応をよそに記者団に向かってこう告げた。「非常にうまくいっていると思う」

本稿はCNNのアリソン・モロー記者による分析記事です。

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