ANALYSIS

米ロがウクライナ情勢めぐり合意、ただしクレムリン相手だと常に難題が

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記者団に語りかけるウクライナのゼレンスキー大統領=25日/Genya Savilov/AFP/Getty Images

記者団に語りかけるウクライナのゼレンスキー大統領=25日/Genya Savilov/AFP/Getty Images

(CNN) トランプ米大統領が求めていたウクライナでの30日間の全面的な停戦には到底及ばない。とはいえロシアとウクライナ双方による合意であり、めったにない前進の兆しだ。

ホワイトハウスは25日、ウクライナとロシアの両国が黒海での軍事行動を制限する限定的な合意に達したと発表した。ただし、いくつかの条件付きだ。

この合意の主眼は、商業船舶の安全な航行を保証し、黒海での軍事攻撃を停止させることにある。ロシアとウクライナは、穀物など農産物の輸出に不可欠な港への自由なアクセスを事実上取り戻すことになる。

ウクライナは、ロシアの黒海艦隊に対してドローン(無人機)を駆使した攻撃で大きな戦果をあげているが、ロシアの海軍艦艇が黒海に戻ろうとする動きがあれば、違反行為と見なすと明言している。

合意の第二の柱として、米国とロシアが、ウクライナとロシアのエネルギー施設への攻撃を30日間停止する方策を講じることも盛り込まれた。限定的ではあるが、さらなる前進と言える。

しかし、クレムリン(ロシア大統領府)を相手にすると常に難題が待ち受ける。

この合意が公表された後、クレムリンは、農産物貿易に関わるロシアの金融機関に科されている一連の制裁が解除されて初めて合意を履行すると明らかにした。

これは、裏口を経由した形での制裁緩和にほかならない。

とりわけ注目されるのが、2022年のウクライナへの全面侵攻以来、ロシアが排除されてきた米国管理下の国際的な決済網である国際銀行間通信協会(SWIFT、スイフト)について、少なくとも一部の再接続が含まれる点だ。

トランプ米政権はこれまでもクレムリンに対して驚くほどの譲歩を重ねてきた。ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟を棚上げにし、ウクライナ政府に領土の喪失を受け入れさせようとするなど、和平の模索は続くものの、いまだ実を結んではいない。

ロシア政府を罰する目的で科された制裁は、実際にロシア経済に打撃を与えている。こうした制裁を、たとえ短期間でもロシアから停戦の約束を取り付けないまま解除すれば、それはロシアのプーチン大統領に対するさらなる譲歩と受け止められかねない。それこそプーチン氏が強く望むことの一つだろう。

ウクライナでの流血を終わらせる決意は変わらないとするトランプ氏だが、この苛烈(かれつ)な戦いにいったん歯止めをかけるだけでも、プーチン氏の手ごわく熟練した交渉団によって難局に直面しているのが現実だ。

トランプ氏がかつて「24時間以内に戦争を終わらせられる」と繰り返し豪語し、その後、もう少し現実的ながら依然として野心的な時間枠に修正した経緯は、記憶にとどめておくべきだろう。

いまや、成功のハードルは犠牲者が出る行為を一時的にでも止めることにまで下がっているようだ。しかし最新の合意があらわにしたように、それすら実現は容易でない。

それでもなお肝心な疑問は、徐々に進む停戦への動きが真の和平プロセスの端緒となり、敵対行為の完全な終結、さらにはウクライナに恒久的な平和をもたらすことにつながるかどうかだ。

そうならなければ、これが偽りの夜明けとなり、合意で成果を得られず、ウクライナの多くの人々が懸念するように、ロシア政府への段階的な屈服へと進むことになる。

本稿はCNNのマシュー・チャンス記者による分析記事です。

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