占領下のヘルソンで市長拘束、ロシアによる州の住民投票計画進む中
(CNN) 選挙で選ばれたウクライナ南部の都市ヘルソンの市長が28日に拘束されていたことが分かった。市内の親ロシア派の当局者が明らかにした。拘束の数時間後には、同市のある州を管轄下に置くロシアの支援を受けた行政府が住民投票の計画を発表した。
イホール・コリハイエウ市長の拘束の背景には、ロシアの任命した州当局の取り組みの拡大がある。当局は州からウクライナ側とのつながりを取り除こうとしているほか、時折発生するロシア人への協力者を狙った暗殺の根絶も図っている。
ヘルソン州の暫定政府に所属する当局者は28日遅く、コリハイエウ市長の拘束を確認した。同市長はロシア軍の占領後も市内にとどまっているが、ロシアが後ろ盾となっている当局により市長の任を解かれている。
同州の軍民共同政府の幹部はコリハイエウ氏の拘束について、同氏が「協力者を装っていた」と説明。実際には「あらゆる取り組みを通じ、一部の人々が依然ネオナチ主義の復活を信じるように仕向けていた」と述べた。
また証拠を示すことなく、コリハイエウ氏が「大金を盗みながら、人々にはわずかな金額しか与えなかった」と主張。「人々の血や死、戦争を欲する全ての者たちには相応の報いが訪れると信じている」とも付け加えた。
この幹部は先週、ロシアのテレビ番組に出演し、コリハイエウ氏がヘルソン州での業務を妨害していると指摘。「ナチスが行政を牛耳っている地域さえある。これらナチスやファシズムの共犯者たちを一掃しない理由などあるだろうか?」と語っていた。
コリハイエウ氏の側近が28日にフェイスブックへの投稿で明らかにしたところによると、同氏は市の職員らが働く施設の一つに到着した際、車から降りた直後に武装したロシアの警護隊に捕らえられた。
隊員らはコンピューターのハードディスクを押収したほか全ての金庫を開け、文書を調べた。その間、コリハイエウ氏は別室で手錠をした状態で待機させられた。捜索後は「Z」の文字の入った車両に乗せられ、連れ去られたという。
「Z」の文字の塗装は、ウクライナの占領地域を走るロシア側の車両の多くに施されている。
上記の側近によれば、コリハイエウ氏はこの2~3日前、「新たに任命された」市長から将来のことについての協議に招待する書簡を受け取っていた。これを断ったことで、同氏は拘束の脅迫を受けていたという。
拘束の前日の27日には、ロシアの国会議員の1人がヘルソンを訪問。次いで親ロシア派の州当局が、ヘルソン州のロシアへの編入に関する住民投票の計画を発表した。
29日には、以前拘束されたヘルソン州の2自治体のトップ2人が解放されたと、非政府組織(NGO)の「ウクライナ都市連合」が明らかにした。
今月15日にはウクライナ軍が、「ヘルソン州立大学の本館に侵入者が押し入り、学長を捕らえて連れ去った。どこに連れていかれたかは分からない」とも発表していた。