OPINION

たった1つの誤算で、核の惨禍が現実に

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米国が1945年8月9日、長崎に投下した型の原子爆弾/Hulton Archive/Archive Photos/Getty Images

米国が1945年8月9日、長崎に投下した型の原子爆弾/Hulton Archive/Archive Photos/Getty Images

ロシアは、すでにこの国家間のバランスを均等にする道をたどりつつあった。60年代の初めまでに、クレムリンは後に3000発を超える規模となる核兵器の最初の1発をウクライナに配備した。ソ連の核開発における初期段階の歩みのいくつかは、すでにウクライナにある研究施設が担っていた。こうした施設は、今回激しい戦闘の舞台となったハルキウ、ドネツク両市に位置している。その後、さらに多くの核兵器がベラルーシとカザフスタンに配備された。

60年代半ばまでに、鉄のカーテンの西側には3つの核保有国(米、英、仏)が生まれていた。東側では表向き4つの国家が核武装していたが、これらは完全にクレムリンの支配下にあった。事実上、核の勢力圏は2つしか存在していなかった。

当時を核対立の古き良き時代として振り返る人は多い。それにはもっともな理由もある。両陣営は数十年にわたり、十分な数の核兵器を保有していた。それぞれのピーク時にはソ連に4万1000発、米国に3万1000発の核があった。それだけの核があれば相手国はおろか、地球上の全生命を滅ぼすことができる。この状況から相互確証破壊(MAD)という概念が生まれた。

以降、複数の軍縮合意が成立して核兵器の保有量は劇的に減少したものの、依然として地球を灰にできるだけの水準は維持されており、陣営同士の緊張も大幅に縮小するには至っていない。冷戦以来核兵器の保有量が縮小する一方で、それらを保有する国の数は増加している。

現在9カ国が核兵器を手にした状況で、そもそもどのようにMADが成立し得るのだろうか?(問題の9カ国は米国、英国、フランス、イスラエル、パキスタン、インド、ロシア、中国、そして北朝鮮だ)これらの国々の中では、個別的な相互確証破壊が複数存在することになる。世界の全核兵器1万3900発のうち、93%余りは依然として米国とロシアが握っている。

ある程度において、そこではMADが有効に働く。実際に相互確証破壊という展望が大きく奏功し、パキスタンとインドは互いに核兵器を撃ち合わずに済んでいる。これまで3度の印パ戦争を戦ったほか、恒常的な武力衝突が係争中の国境を挟んで起きているにもかかわらずだ。

とはいえ、より広範な脅威は拡大の一途をたどる。国家の存亡にかかわる課題に直面した時、ロシアが、あるいは64年に核保有国となった中国が、保有する核兵器を展開しない可能性はどのくらいのものだろう? 実際ロシアはそうした脅迫をウクライナでちらつかせた。同国に侵攻するわずか数週間前、ロシアは核戦力を含む軍事演習を行った。この時プーチン大統領は、自らの核抑止部隊が「特別警戒態勢」にあると発表していた。

そのうえで、周辺的な核保有国というものが存在する。世界の大半がウクライナ、台湾、そしてアフガニスタンのテロリストのリーダーにくぎ付けとなる中、北朝鮮は依然としてミサイルを発射し、新たな核実験の脅迫を続けている。朝鮮戦争で勝利したと位置づける先月の記念日には、金正恩総書記が自らの核抑止力を「動員する用意がある」と警告した。

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